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パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して(院長レポート)2024年9月30日
2024年9月にオーストラリアのパースで開催されたオーストラリア生殖医学会(FSANZ 2024)に蔵本和孝医師と培養室室長の水本と参加をしてきました。
FSANZでは胚培養液の開発で世界トップのデビット・ガードナー先生やアメリカのジャック・コーエン先生が培養室の全自動化について話され、近い将来のラボの方向性について示されました。
オーストラリアは移民も多く、わが国と比べて年々、人口・物価が増加しています。物価は以前の3倍以上にもなったそうです。
私達が最初に訪れたパースは、人口205万人を有する美しい都市です。
パースは私が1990年にオーストラリアの医師免許を所得して、PIVET Medical CentreでDr. Yovichの教えの元、体外受精の研修と実地を行った場所でもあります。
現在、PIVETはMonash IVF Perthと名称を変えていますが、建物の外観はほとんど変わっておらず、当時の懐かしい記憶のままでした。
今回34年ぶりにこの場所を訪れましたが、体外受精の妊娠率を向上させるべく、日夜働いていた若かりし頃の私を思い出しました。
お世話になったJohn Yovich先生は既に退職されており、現在はヨーロッパにお住まいで、お会いすることは叶いませんでしたが、お父さんそっくりの息子さんがエンブリオロジストとして働いておられました。
1990年にPIVETで働いていたとき、体外受精に対し、高度なチーム医療で臨まれていることに感銘を受けた覚えがあり、その当時、医師と検査技師のみで体外受精を行っていた日本では考えられないような素晴らしいシステムを見て、目から鱗が落ちたものでした。
この時、オーストラリアの地で生殖医療に一生を掛けよう、そして優秀なスタッフ(医師、サイエンティスト、エンブリオロジスト、IVFコーディネーター)を導入してチーム医療を行い、よりレベルの高い生殖医療を日本で行おうと心に誓いました。
これが1995年に開院する蔵本ウイメンズクリニックの原点です。
1990年、当時の卵巣刺激法は最も良い方法として、GnRHアゴニストのロングプロトコール法が主流でした。培養液は主にHTFという卵管液に似た初期胚を培養するもので、まだ胚盤胞を培養することは出来ませんでした。
FSANZ後はオーストラリア大陸を横断して、オーストラリア最大の人口を有する都市であるメルボルンへ移動し、親しくさせて頂いているメルボルン大学の教授でメルボルンIVFのサイエンティフィックディレクターでもあるデビッド・ガードナー先生の施設を訪問しました。
ガードナー先生は人の胚盤胞まで培養する培養液を世界で初めて作成し、また胚盤胞の質の評価法であるガードナー分類を考案された方です。今回、メルボルンIVFの中をガードナー先生自ら案内していただき、先生が考えておられる新しい技術等について情報交換を行いました。また、ガードナー先生の最新の著書を先生自ら私に贈呈していただきました。
当院培養室とガードナー先生は以前より協力関係にありますが、当院は先生が考案された「活性酸素を除去した抗酸化剤添加培養液」を用いた培養を行った結果、高齢患者に対する有用性を初めて確認し、水本培養室室長が2019年にアメリカ生殖医学会(ASRM)で発表してSRBT Basic Science Awardに選ばれ、表彰をいただきました。さらに水本室長の論文は海外の学術雑誌で発表されました。
続いて、N゜1 FERTILITYへも訪問しました。N゜1 FERTILITY はMonash大学のIVF部門の副院長であるDr. Lynn Burmeisterが6年前に開院したクリニックで、最近この場所に移転されたそうです。
スタッフは全て女性で、施設内の内装はピンクで統一されたカラフルな印象でした。クリニックには最新の機器が備えられておりました。今回3つの施設を見学しましたが、オーストラリアでトップクラスの施設はいずれも効率の良い診療を行っているように感じました。
今回のオーストラリア訪問を通じて、またガードナー先生や他の方々と交流し、今後もよりレベルアップしたクリニックを目指したいと思っております。
パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して(培養室レポート)2024年9月27日
培養室の水本です。
9月14~17日にパースで開催されたFertility society of Australia and New Zealand (オーストラリア・ニュージーランド生殖医学会;FSANZ)の学術集会に、院長、蔵本和孝医師、私の3人で出席しました。暑い日本を離れ、過ごしやすい春のオーストラリアでしっかりと研修させていただきました。
オーストラリアは畜産国のため、古くから繁殖増進を目的とした配偶子(卵子・精子)および受精卵(胚)に関する研究が盛んに行われています。不妊治療を目的とした体外受精技術にもイギリスと並んでいち早く取り組み始め、世界の最先端を走っている国の1つです。それに相応しくAIを駆使したARTの全自動化システムや器具開発についての報告がある一方で、新鮮胚移植と凍結融解胚移植の比較など、日本では10年以上前に行われていたような研究も多く見られ、各国の治療方針の違いが垣間見えました。日本の体外受精児は90%以上が凍結融解胚移植によって得られています(ARTデータブック最新版より)。今回、FSANZの年次報告にも出席しましたが、オーストラリア・ニュージーランドの出生児に占める凍結融解胚移植の割合は37.3%との事でした。
印象に残っている発表として、「“The compassionate Freeze”. A study on embryologist’s decision making in utilizing poor quality blastocysts for poor prognosis patients.」という演題を紹介したいと思います。内容を一言で言うと、胚培養士が胚の凍結を行う判断に患者背景が影響するのかを調べたものです。
胚の凍結は、日々観察を行い形態的に良好なものを選別して適切なタイミングで行っています。しかしながら我々も人間ですので、たとえ形態不良であっても受精卵を廃棄するには抵抗があります。過去に妊娠・出産した経験がある方の場合は「形態不良でも妊娠出来るかな?」と思ったり、逆に培養成績が芳しくない方の場合は「形態不良だけど凍結してあげたいな…」というのが心情です。ところが実際は、形態不良胚の妊娠率は患者背景に関わらず著しく低いというのが現実です。
今回紹介している演者らの施設では、凍結を行う胚培養士を“患者背景を考慮する群”と“患者背景をシャットアウトする群”に分けたところ、前者の場合に形態不良胚まで凍結する確率が高くなったとの事でした。
本発表を拝聴し、「どの国の胚培養士も同じ事に悩んでいるのだな…」と思うと同時に、患者様を思っての判断によって逆に妊娠までの期間を延ばす可能性がある事、特に日本の場合は保険の治療回数を消費する可能性がある事を痛感しました。
最後に一言付け加えさせていただきます。
当院の胚培養士は、皆様の背景をきちんと理解した上で、明確な基準に則って胚凍結を行っております。また、より多く良好胚を得るための研究を日々行っております。その点ご安心ください。今後も色々な視点の情報をインプット・アウトプットし、より良い治療に繋げて行きたいと思います。
アシステッドハッチングや卵子の細胞質置換などを考案されたJaques Cohen氏と。この分野のレジェンドです。現在はART全自動化システムの研究・開発に取り組まれています。
パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して2024年9月19日
医師の藏本和孝です。
今回、院長、私、水本培養室長の3人で、2024年9月14日から17日にオーストラリア(パース)で開催された、FERTILITY SOCIETY OF AUSTRALIA AND NEW ZEALAND ANNUAL CONFERENCE 2024 (オーストラリア、ニュージーランド生殖医学会)に参加しています。
パースは院長が34年前に留学、勤務を行なった場所で、蔵本ウイメンズクリニック発祥の地と言っても過言ではありません。期間前後で施設見学も兼ねていますので、後日ご報告させていただきます。
今回の学会で、私が印象に残ったトピックスとして、卵巣機能が低下している方に対する治療法がまとめられてありました。
国内での治療方法として、
①自己多血小板血漿(PRP)療法:(採血後、高濃度の血小板を卵巣内に注入する方法)
②PFC−FD療法(採血後、血小板中の成長因子のみを取り出して卵巣内に注入する方法)
③原始卵胞体外活性化法(IVA): (卵巣内に残った卵胞を体外で活性化させ、腹腔内に移植する方法)などが行われています。
また、海外では、
③ 自家幹細胞卵巣移植(ASCOT):(骨髄穿刺をして得た細胞から幹細胞を作成し、卵巣に注入する治療法で、治療2週間後の胞状卵胞数が81.3%の患者で上昇した)と報告されています。
卵巣機能が低下している症例に対してはまだ一定の治療法がありませんが、世界中で様々な方法が模索されています。
当院では特にPRPに注目しています。PRPは採血当日に卵巣内に血小板血漿を注入することができ、患者様の通院回数を減らすことも可能です。
PRPの子宮内投与は当院でもすでに行っておりますが、卵巣内投与に関しては、現在準備を勧めております。進展があり次第、皆様にご提示させていただきます。
最後に、通院患者様へのメッセージとなりますが、我々が不在の間に待ち時間が長くなり、大変ご迷惑をおかけしております。
10月、11月も学会が続きますが、皆様のベストとなる治療をご提示できるよう精進して参ります。
第42回日本受精着床学会(大阪)に参加して2024年8月28日
培養士の水本です。
8/22~23に大阪国際会議場で開催された日本受精着床学会学術集会に、蔵本院長、長尾培養室主任と参加してきました。今回当院は3演題の発表を行いましたが、私からはその内容について紹介させていただきます。
長尾主任の演題は「TESE-ICSIにおける奇形精子使用の影響」というものです。
我々が通常顕微授精(ICSI)を行う際は、運動能の高い形態良好な精子を選別して使用しますが、精巣内精子を使用する場合(TESE-ICSI)や重度の乏精子症の場合は、精子の選択肢が少なく苦慮する事があります。今回、当院で実施したTESE-ICSIの結果を集計し、精子の運動能と形態毎の臨床成績を比較したところ、運動能が低い場合であっても正常形態精子を使用した方が受精率と培養成績が良くなる事が分かりました。
今後も引き続き検討を行い、精子選別に関する明確な基準を定めたいと思います。
私は今回2題発表の機会をいただきました。
初日には、”先進医療の将来展望” というセッションにおいて「PICSIの現在とこれから」と題した発表をさせていただきました。
PICSIとはヒアルロン酸を使用して良好な精子(成熟した精子)を選別する技術の事です。2022年4月からの不妊治療保険適用に際して特定の技術が先進医療に選定され、保険収載に向けて日々臨床研究が行われています。PICSIもその技術の1つであり、私からは現在までのPICSIの成績と今後の展望について報告させていただきました。
現在、先進医療の多くは適応症が限定されている状況です。当院は保険適用以前からPICSIを採用し良好な成績を収めており、今後より多くの方に技術を提供出来るよう活動を続けて行きたいと思います。
最終日には、”How do Antioxidants work in the culture medium?” というセッションを、メルボルン大学のDavid Gardner教授と2人で担当させていただきました。
Gardner教授は培養液の研究を始めとし、世界中で使用されている胚盤胞の評価方法を立案されるなど著名な先生です。当院はこれまでに先生方の研究室と共同で抗酸化物質を添加した培養液に関する研究を行っており、特に高齢患者の臨床成績向上に有効である事を明らかにしています。今回先生から抗酸化物質が培養液中で働くメカニズムについて、私からは「抗酸化物質を添加した培養液の臨床転帰について」というテーマでこれまでの臨床成績を報告させていただきました。
我々培養士は日々皆さまの卵子・精子・受精卵を取り扱っております。受精や発生(胚の発育)は本来卵管や子宮の中で起こるものであり、ほんの少しの事で成績が左右されます。今後もより良い治療を提供するために研究を行い、結果を発信していきたいと思います。
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培養士の長尾です。
8/22~23日に大阪の国際会議場にて開催された「日本受精着床学会」に蔵本院長、水本室長とともに参加してきました。この学会は毎年この時期に開催されており、全国の医師や看護師、培養士などが多数参加しております。私は1日のみの参加でしたが、他施設の培養士の方々、企業の方々と意見交換をしたり、さまざまな発表を聞いたりすることで最新の知見を得ることができました。また、世の中にはChat GPTといったいわゆるAIが広まってきていますが、不妊治療分野にもその波がきており、AIに胚を評価させる、AIに分析をさせるなどといったAIを活用した発表も多数見られました。
不妊治療に関わる技術は日進月歩です。このような学会で得た知識をクリニックに持ち帰り、不妊に悩む患者様の力に少しでもなることができればと思います。
第48回日本遺伝カウンセリング学会学術集会(東京)に参加して2024年8月7日
医師の吉岡です。
8月3日〜5日、東京で開催された「第48回日本遺伝カウンセリング学会学術集会」に参加してきました。
コロナ禍でずっとオンライン参加をしていたので、現地参加は久しぶりでした。
この学会の参加者の多くは、医師と認定遺伝カウンセラー、認定遺伝カウンセラーを目指す人たちですが、染色体や遺伝子の異常で生まれつき障害を持つ人やその親の会の人たちなど、いろいろな人が毎回参加されています。今回は、NHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」のプロデューサーの方の講演もあり、そのドラマに出演されているダウン症の吉田さんと言う俳優さんも来られていました。
生まれつきの病気や遺伝性の病気は本当に色々なものがあり、そのことをまずは自分が知ること、そして、社会に知ってもらうことがとても大事であるということを、改めて考えさせられました。
アムステルダム(オランダ)で開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加して2024年7月20日
こんにちは、医師の江夏です。7月8-10日にオランダはアムステルダムで開催されたESHREに参加してまいりました。ESHREは生殖医療に関する最新の知見を発表する場で、世界中から医師・培養士・看護師などが参加する学会です。
当院からは私が参加し、ポスター発表をしてまいりました。他国からの参加者の発表を聞き、非常に勉強になったと共に、我々の行っている診療が世界標準レベルに達していると実感でき、非常に有意義な学会となりました。これからもより良い医療を提供できるように精進します。
どの発表も非常に多くの参加者が聴講していました。
参加者は134ヵ国より11647人!!
学会で発表するために応募された数は2218件。発表を許されるのはその半数程度です。
企業ブースでは最新の技術を企業から関係者に向けてプレゼンテーションしていました。
第64回日本生殖医学会学術講演会・総会に参加して2019年12月3日
2019年11月7日・8日に第64回日本生殖医学会学術講演会・総会が神戸市で開催されました。
メインテーマを「世界に発信する個別化生殖医療」とし、一般演題には口頭演題50セッション254題、ポスター展示327題と計581題の発表が行われ、とても活発で有意義な内容でした。当院からも口頭演題で培養部から1題、ポスター展示で医局と看護部からそれぞれ1題ずつ発表を行いました。
培養部からは当院培養士の仲宗根が、「市販のヒト胚培養液が培養成績と妊娠経過に及ぼす影響」についての発表を行いました。
現在、様々な種類の市販の培養液が使用されていますが、それらを比較した報告はまだ数が少ないのが現状です。今回は当院で使用していた3種類の培養液でランダム化臨床試験を行いました。これまでに培養成績(胚盤胞になる確率)が高い培養液と良質な胚ができる培養液は必ずしも同じではないということを明らかにしており、今後児の健康を含めた追跡調査を行い、培養液の安全性を確かめていく必要があります。
医局からは小川医師が、「当院における反復着床不全に対するERA(Endometrial Receptivity Analysis; 子宮内膜受容能検査)の有用性の検討」という演題で発表を行いました。
ERAとは、子宮内膜の着床に関連する遺伝子発現の解析を行う検査です。不妊原因のひとつとして、良好胚ができても子宮内膜が着床準備するタイミングが合っておらず、妊娠に至らない場合があります。ERAを行うと子宮内膜で胚が着床する準備ができているのがわかり、胚移植の時期を最適化できます。これをpET(personalized ET;個別化胚移植)といいます。当院での反復着床不全症例における妊娠率としては良好な結果が得られ、難治症例に対して期待できる検査であると考えられます。
看護部からは園田主任が、「不妊治療と仕事の両立を支援する両立支援外来を開設して」という演題で発表を行いました。
当院では、仕事を持つ女性が不妊治療と両立できるよう両立支援外来を開設して、情報提供や仕事の状況に応じたスケジュール調整を行っております。月経周期に関係なくスタートできる卵巣刺激法やホルモン補充療法を用いることで計画的なスケジュールを立てることができ、最小限の受診でARTを受けることが可能になります。通常のARTと比較しても治療成績は変わらず、任意のアンケート結果より仕事との両立支援に有効なサポートであることがわかりました。
これからも患者様の治療に有益な知見を取り込み、その比較検討を行いながら良い結果につないでいきたいと思います。
また今回、当院院長である蔵本武志が日本生殖医学会2019年度臨時社員総会にて、我が国の生殖医療の発展に情熱を傾け貢献したことを評価され、功労会員証を授与されました。
フィラデルフィアで開催された生殖医学会(ASRM)に参加して2019年11月20日
2019年10月11日から16日にアメリカのフィラデルフィアで開催されたアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加してきました。
当院からは、培養部から2名、研究部から1名、計3名が参加しました。培養部からは私が「SIMPLE VITRIFICATION OF A SMALL NUMBER OF TESTICULAR SPERMATOZOA USING RAPID-I CARRIERS IN NON-OBSTRUCTIVE AZOOSPERMIA」という演題で口頭発表を行いました。非閉塞性無精子症患者様のTESE精子をRapid-iという凍結器具により少数精子凍結を行うことで、融解後効率よく精子を見つけ出すことができ、その後生児獲得にも至ることができたという内容です。Rapid-iを用いた少数精子凍結法は、通常のチューブによる精子凍結法に比べて、融解後の精子回収率がよく、精子生存率が飛躍的に改善されます。精子数が極めて少ない方の精子凍結においては、非常に優れた凍結方法です。初めての国際学会での発表で、英語も苦手ということもあり緊張しましたが、無事に終えることができました。
研究部の村上主任は「INFLUENCE OF COMMERCIAL EMBRYO CULTURE MEDIA ON IN VITRO DEVEROPMENT, PREGNANCY, AND PERINATAL OUTCOMES AFTER IVF: A SINGLE-CENTER RCT」という演題でポスターの発表を行いました。培養液はART(体外受精、顕微授精)での胚の体外培養において欠かせないものですが、安全性や有効性、さらに長期的な影響も踏まえて使用していくことが重要です。現時点での影響だけでなく、出生児の体重といった周産期データや予後の調査など、長期的に検討を継続していき、より良い培養液を使用・開発していくことが重要であるということがわかる内容でした。
培養部の水本室長は「PROSPECTIVE RANDOMIZED MULTICENTER STUDY ON CULTURE OF SIBLING HUMAN OOCYTES IN A SEQUENTIAL MEDIA SYSTEM WITH AND WITHOUT ANTIOXIDANTS:THE EFFECT OF FEMALE AGE」という内容でポスター発表を行いました。この発表は、ガードナー分類や培養液において世界的に有名なガードナー先生およびモンタック先生との共同研究であり、培養液に抗酸化剤を添加することで胚の質を良くし、胚盤胞に発育する率も上昇し、特に高齢の患者様において妊娠率や妊娠継続率を向上しうるという内容でした。名誉なことに、この発表はSRBT Basic Science Awardにも選ばれ、表彰をいただくにいたりました。
学会の合間には少しだけ観光もさせていただきました。アメリカ合衆国の独立宣言と憲法宣言が署名された独立記念館や、映画「ロッキー」でシルベスター・スタローンが駆け上がるシーンで有名なフィラデルフィア美術館の階段にいきました。あいにくの雨だったのですが、日本にはない街並みや雰囲気を楽しむことができました。
国際学会への参加は去年のESHREに引き続き2度目だったのですが、発表という機会は初めてだったので、非常に良い経験を積むことができ、自分自身のスキルの向上に少しでもつながったのではないかと思います。最後になりましたが、このような経験をさせてくださった院長および、発表のサポートをしていただいた村上研究室主任、水本室長に感謝するとともに、参加するにあたり業務の調整に協力してくださったスタッフの方々には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
オーストリア(ウィーン)で開催されたヨーロッパ生殖医学会[ESHRE]に参加して2019年7月23日
当院では、国際的な視点から新しい知識・技術を獲得し治療に還元するため、毎年ASRM(アメリカ生殖医学会)やESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)といった国際学会に参加しております。
今回は、オーストリアのウィーンにて、6/23から6/26まで開催されましたヨーロッパ生殖医学会に参加させていただきました。
当院からは院長および培養士1名の2名が参加しました。世界124カ国から9979名が参加し、口頭発表が313題、ポスター発表が803題ありました。
学会1、2日目には日本語セミナーに参加し、口頭発表の内容を解説していただきましたので、英語の聞き取りが出来ない私でも内容を理解することが出来ました。
発表の傾向としましては、着床前診断とタイムラプス解析による胚の評価に関わるものが多いようでした。世界的に胚のタイムラプス解析はスタンダードになっているようでした。着床前診断では、一部デメリットとして胚に対して多少なりとも侵襲的になってしまうということが挙げられます。このことに対して、非侵襲的に着床前診断が出来ないか検討している発表も多数見受けられました。タイムラプス解析で正倍数性の胚を検出可能であるとか、胚を培養していた培養液で診断が出来るなど早急に臨床的に応用できるまで研究が進んでくれることを願いたいです。
ところで、これだけ演題がありますと多少なりとも似通ったものが多くなってきますが、中には全く正反対の結論を発表している演題もあり、生殖医療はまだまだ未開拓で未知な部分が多い分野なのだなと実感しました。
国際学会に参加する意義として当院より発表したり、発表を聞き新たな視点を知ることもそのひとつですが、参加している生殖補助従事者の方々と交流し、意見を交換し合うことも重要です。今回も当院で使用している製品の成績についてドイツのマルクス・モンタック博士とミーティングを行ったり、igenomix社のカルロス・シモン教授の意見を聴いたりととても有意義な時間を過ごすことが出来ました。
さて、今回のESHRE参加の合間にはオーストリアのウィーンとハンガリーのブタペスト観光にも参加させていただきましたので少し紹介させていただきたいと思います。
ウィーンといいますと650年も続いたハプスブルグ家の繁栄と衰退が有名で、18世紀全盛期の女帝マリア・テレジアやその末娘マリーアントワネット、美女として知られたエリザベートなど宮殿や王宮の華やか文化が現在も色濃く残っていました。
次にブタペストです。初代国王イシュトバーンが国家を建設してから1000年の歴史ある街並みで中心をドナウ川が流れています。絵のように美しい光景はドナウの真珠と呼ばれているそうです。また高さのある建設物は認められておらず,見晴らしの良い所に行けば,美しいブタペストの街並みを一望することが出来ました。
他にも世界一美しいと呼ばれる国会議事堂やドナウ川でのディナークルーズに参加させていただいたりと素晴らしい経験をさせていただきました。
今回、国際学会に参加という貴重な体験をさせてくださった院長に感謝するとともに、参加するにあたり業務の調整に協力して下さったスタッフの方々には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
福岡市で開催された第76回九州・沖縄生殖医学会に参加して2019年5月11日
福岡市のエルガーラホールにて、2019年4月7日(日)に九州・沖縄生殖医学会が開催されました。
院長をはじめ医局、培養部、看護部などスタッフ全員で参加しました。
九州・沖縄の不妊治療施設から、口頭発表37題、ポスター発表18題があり、当院からも5題発表しました。
医局からは1題、培養部からは3題のうち2題をここで紹介させていただきます。
「当院における反復着床不全に対するERA(Endometrial Receptivity Analysis;子宮内膜受容能検査)の有用性の検討」
院長の勧めでERAの論文を初めて読んだとき、生殖の分野は正に日進月歩で、常にアンテナを張って新しい情報を仕入れ、それが有能なものかを判断していくことが大事であると改めて感じました。その後、院内倫理委員会の承認を得て、当院では2018年3月にERAを導入しました。
ERAは、ARTにおいて良好胚(胚盤胞)を複数回移植しても着床に至らない反復着床不全の方を主な対象とした検査で、遺伝子レベルで着床可能な時期のズレがあるかを調べます。(詳しくは当院ホームページの治療の項目の反復着床不全の部分や、検査委託会社であるIgenomix社のホームページをご覧ください)
2018年12月までに当院でERAを行った後に胚盤胞移植を行った症例を検討しました。ズレを補正して個別化された胚移植を行った群では、反復着床不全にも関わらず高い妊娠率が得られました。良好胚の凍結はできるものの着床に至らず悩まれる方々にとって有用な検査なのか、今後も慎重に検討を重ねていく所存です。
医局 小川 尚子
「抗酸化物質を添加した培養液は精子の運動性維持に有効である」
当院では、培養液への抗酸化物質添加に関する試験に取り組んでおり、これまでに、ARTの一連の手順における採卵から胚培養までに用いる培養液への抗酸化物質の添加が、臨床成績向上に繋がることを報告しております。今回の発表では、精子においても抗酸化物質は有効であることを比較検討し、報告しました。
学会発表は初めてで緊張しましたが、良い経験をさせていただきました。今後、もっと検討を重ねて臨床成績の向上に繋げていきたいと考えます。
培養室 一木 巴恵
「遠心フリー運動精子選別装置MIGLISの有効性」
当院では、精子処理の際に、主に攪拌密度勾配法と呼ばれる方法を用いております。この方法は、遠心分離により良好運動精子を回収するものです。そして今回は、遠心操作による精子へのストレスをなくす目的で、遠心不要の”MIGLIS”という運動精子選別装置の有効性について、精子の運動性の観点から検討しました。
結論としては、MIGLISは運動性の高い精子の回収に有効であると示唆されます。また、今後の追加検討もいくつか明瞭化することができました。
今回の発表を通して得た知識や経験を今後の業務に生かし、日々邁進していく所存です。学会で発表することだけをゴールとするのではなく、検討内容を実際に臨床の場に応用し、治療成績の向上に繋げていきたいです。
培養室 後藤 美緒
バルセロナ(スペイン)で開催された生殖医学会に参加して2018年8月4日
スペインのバルセロナにて、7月1日から7月4日までヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が開催されました。
当院からは院長および培養士1名の2名が参加しました。世界130カ国から11600名が参加し、日本からは120名が参加しておりました。
ESHRE開催1週間ほど前にスペインのバレンシアに入り、着床に関連している遺伝子検査を世界的に実施している「Igenomix」の本社およびスペインのみならず世界のさまざまな地域で生殖補助医療を行っているクリニックである「IVI」の見学をさせていただきました。
IgenomixはERA(子宮内膜受容能検査)、子宮内フローラ(生殖器内に存在する様々な菌のバランスを調べる検査)、PGD(着床前診断)、PGS(着床前遺伝子スクリーニング)、NIPT(新型出生前診断)などといった遺伝子検査を外部から受託し、その検査を行っている会社です。Carlos Simon教授とお会いし、意見交換を行いました。Simon先生は、反復着床不全では至適な子宮内膜移植時期にズレがあること、着床に関連している遺伝子365個を見つけ、最も着床しやすい時期を示すWOI(Window of Implantaion)を調べるERA(子宮内膜受容能検査)を確立された先生です。ERAをおこなう日に併せて子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎関連菌の同定検査ができ(この3検査をあわせてEndomeTRIOと言うそうです)、その結果をもって有効な抗生剤等の治療を行い、適切な胚移植日を決定します。
Igenomixの本社では年間4000件ほどの解析を行っているとのことでしたが、解析を行うチーム、分析および情報提供を行うチーム、研究を行うチームなどにきちんとわかれており、スムーズに情報を提供できるシステムが作られているとのことでした。
IVIは1990年に設立された生殖補助医療クリニックです。スペインのみならずアメリカ、イタリア、メキシコ、インドなど世界のさまざまな地域で生殖補助医療技術を提供しています。それらの地域のクリニック全体で年間13000周期の採卵、12000周期のETを行っており、患者様の希望によっては卵子提供やPGDやNIPTなどの遺伝子検査も行っているとのことでした。見学をさせていただいたバレンシアのIVIはIVI発祥の施設で、年間6000周期の採卵を行っていました。約250名のスタッフが働いており、9:00~14:00、14:00~21:00の2交代制でスタッフも非常に働きやすい環境となっていました。また、患者様の待ち時間を減らす対策にも取り組んでいるそうです。非常に刺激のある経験をすることができました。
見学後は学会参加のためバルセロナに移動しました。学会期間中は日本語セミナーもあったため、英語が苦手な私でも今回の学会の演題の内容を深く理解することができました。学会の内容は昨年に引き続きPGDやPGS、タイムラプス(受精から胚盤胞までの発育を等間隔で撮影し観察するもの)を用いた胚の解析などが多く見られました。
国際学会に参加することで、世界各国で行われている医療技術に触れることができ、医療従事者の1人として刺激を受けるとともに、また1歩成長する事が出来たような気がします。
学会の合間には観光もさせていただきました。サグラダ・ファミリアやカサ・ミラ、カサ・バトリョなどの世界遺産などを見学させていただきました。日本では見られないような街並みが非常に美しく、思わず写真を何枚も撮ってしまいました。スペイン料理であるパエリアや地中海料理などもいただきました。日本人の口に合う食事で非常に美味しくいただくことが出来ました。また今回はドバイを経由しての渡航だったのでドバイの観光も少しさせていただきました。この時期のドバイは非常に暑く、外に出るとサウナに入っているような感覚になり、実際現地の人たちもこの時期の昼間には仕事をセーブしたりするとのことでした。世界一高いビルなども観光させていただいたのですが、街並み自体が近未来的で非常に感動しました。
今回、国際学会に参加という貴重な体験をさせていただいたうえに、スペインおよびドバイ観光も十二分に楽しませていいただき、日本ではなかなか味わうことのできない現地の料理も美味しくいただくことができました。このような経験をさせて下さった院長に感謝するとともに、参加するにあたり業務の調整に協力して下さったスタッフの方々には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
培養室 長尾 洋三
スイス・ジュネーブ開催のヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加しました2017年8月1日
2017年7月2日〜5日にジュネーブで開かれたESHREに院長と私が参加しました。
毎年、世界各国より1万人近くが参加し、今年の発表は口演が298題、ポスターが807題でした。
当院からは口演:Influence of commercial embryo culture media on preimplantation development and pregnancy outcome after IVF: a single-center RCTを発表しました。
胚の培養は生まれる児の健康にとっても大事なステップです。当院は、培養液が胚の発育や妊娠に与える影響を体系的に調べており、今回はその経過です。発表時や期間中に得た質問やコメントを活かし、今後も「学会と現場をリンク」させながら、良い培養系を得る検討を続けたいです。
行きに乗り継ぎのパリの空港で不審者騒動があり、フライトキャンセルが相次ぎ、結局空港内のベンチで一晩を過ごしました。翌日の便にも乗れず、500キロ以上離れたジュネーブまで7時間のバス移動と、ただ座っていただけですが、もはや達観状態です。空港周辺は車も多く、雑多な景色を眺めてうたた寝するしかありません。じきに窓外には麦畑や森が広がりいかにも牧歌的です。
ふと目を覚ますと、外は草原でシャロレー種というフランス原産の白い肉牛が草を食んでいます。昔つくったクローンウシと同種の牛だったので、懐かしくも方々に散らばる光景が少し妙に感じました。
食事については、パンとチーズとハムの種類が豊富でどこで食べても旨くて印象的でした。日本でいうご飯に納豆、甘塩鮭といったところでしょうが、駅のスーパーで買った山積みのパック入り生ハムでさえ旨くて、率直に食文化の深さを感じました。
ESHRE自体、当院が行う胚の培養や凍結、移植がメインと言っていい学会で、関連する演題の発表も一番大きい会場です。言語や文化は異なり、西洋主義でもないですが、目的を共有できる国際学会があり、そこに行けることに感謝したいです。あと、大小のクリニック、企業、大学の方々とも様々な形で接触でき、気持ちに少し余裕ができました。とはいえ、どこか外部と共同研究をする場合は、あまり馴れ馴れしいと彼方も嫌でしょうし、それで意見しづらくなるのも問題です。個人的には、適当な距離感で結果を出しつつ、発表だけでなく論文も書いて相手にしてもらうのがいいかと、今回の学会を通じ改めて感じました。今後に向け収穫を得た1週間でした。
研究部門主任 村上 正夫
ヘルシンキ(フィンランド)で開かれた生殖医学会に参加して2016年7月10日
フィンランドのヘルシンキにて、2016年7月3日から7月6日までヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が開催されました。
院長、研究部1名、培養士1名の計3名で参加しました。世界117ヵ国から6741人が参加しており、口頭発表は295題、ポスター発表800題あり、当院は研究部から「Simple effective vitrification of a small number of human spermatozoa using Rapid-i carriers: a follow up study」という演目で、ポスター発表を1題行ないました。液体窒素に暴露しない安全なデバイスを用いた希少精子凍結に関する報告です。
ジャカルタ(インドネシア)で開催されたASPIREに参加して2016年4月1日
2016年4月8~10日にThe 6th Congress of the Asia Pacific Initiative on Reproduction (ASPIRE)がインドネシアのジャカルタで開催され、院長、村上(研究)、水本(培養)の3人が参加しました。
当院からは、村上が「Albumin source for blastocyst culture influences embryo morphokinetics and viability after vitrification : from animal model to clinical trial.」という演題の発表を行いました。
培養液には血清由来の成分が含まれているため、感染等のリスクはゼロではありません。そこで、当院ではより安全なARTシステムを目指し、血清成分を含まない培養液について研究を行っています。いずれの検討も、まずはウシを用いた基礎実験を行い、その結果を踏まえて臨床に応用する、という形をとっています。今回の発表は、血清由来成分を含む培養液を用いた場合と無血清培地を用いた場合の、ウシ・ヒト胚それぞれの発生速度と形態変化を比較したもので、いずれも良好な結果を得ることが出来ています。
リスボン(ポルトガル)で開催された生殖医学会(ESHRE)に参加して2015年6月1日
ポルトガルのリスボンにて、6/14から6/17までヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が開催されました。
院長、研究部1名、培養士1名、看護師1名の計4名で参加しました。世界各国からたくさんの人が参加しており、口頭発表は281題、ポスター発表796題あり、当院は研究部からポスター発表を1題行ないました。
当院の発表は、無血清の培養液の検討で、ウシの卵子を用いてヒト由来の血清入り培養液と無血清の培養液を使用し、媒精から胚盤胞に至る時間、及び胚盤胞形成率を比較検討したという内容です。無血清の培養液を用いることは、生殖医療の安全にとても重要です。当院では、動物の基礎実験をふまえて臨床に応用しています。
ハワイで開催されたアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加して2015年1月1日
2014年10月18日から22日にハワイのホノルルで開催されたアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加してきました。
医局、研究、培養、看護の各部門から1名ずつ4名のスタッフが参加しました。当院の研究部からはNEONATAL OUTCOMES OF TRANSFER OF BLASTCYSTS VITRIFIED ABD WARMED IN DEFINED SOLUTIONS CONTAINING RECOMBINANT HUMAN ALBUMIN:354 BABIES BORN FOLLOWING 851 EMBRYO TRANSFERS というタイトルで口頭発表をしました。
凍結保存をする際に人の血液からとった血清を使用することで生じる感染症等のリスクを減らすために「無血清」の液を使用して今までよりも安全に胚凍結・融解を行い、生まれてきた赤ちゃんにも良い影響を与えたという内容の発表です。
ミュンヘン(ドイツ)で開催された生殖医学会に参加して2014年7月1日
ドイツのミュンヘンにて、6/29から7/2までヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が開催されました。
院長、培養士1名、看護師1名の3名で参加しました。当院からはポスター発表1題を行ないました。ESHRE参加者は約8573名、参加国109カ国、口頭発表274題、ポスター発表600題でした。
学会では、日本では限られた症例のみに行われるPGD(着床診断)や、日本ではまだ行われていないPGS(着床前スクリーニング)などに関する発表がありました。
また、培養液の種類に関する検討や、培養中の胚の様子をリアルタイムでPC上にて観察できるタイムラプスシステムに関する発表などもありました。学会を通して、様々な国の様々な発表を聞き、多くの刺激を受け多くのことを学びました。
また、ミュンヘン最大の生殖医療クリニックを見学し、そこでドイツでは、胚が分割した時点で「ヒト」とみなされるため、胚凍結は前核期胚でしか行うことが出来ないと知りました。そういった文化の違いにも驚きました。
ロンドン(イギリス)で開催された生殖医学会に参加して2013年7月1日
2013年7月6日~7月13日、イギリス・ロンドンで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加させて頂きました。
参加者は、院長、培養部1名、研究部1名と看護師の私1名でした。事前情報ではロンドンは快晴の日が少なく、曇っていることが多いと聞いていたのですが、滞在中はすっきりとした快晴で天候にも恵まれました。歴史ある建物や寺院を見ることができ、街のさまざまなところに花が植えられており、映画にでもでてきそうなとてもきれいな街並が印象的でした。
今年の学会の演題数は888題で、口頭発表が282題、ポスター発表が606題でした。
当院からは、研究部が口頭発表、培養部がポスター発表を行いました。通常、胚の培養や凍結保存する時に人の血液からとってきた血清を用います。これまで研究部では、これらの成分を含まない「無血清」の液で胚が凍結できることを学会で示してきました。無血清の凍結液を使用することで感染症等のリスクが減り今までよりもより安全に胚凍結が行えるようになります。
今回の発表は、この無血清の液で胚を凍結しても移植後に高い妊娠率が得られることを200症例以上の検討で発表しました。また生まれてくる児の予後も従来法と変わらないことを100症例以上の出生児で確認しました。この発表は当院が世界で初めてです。また、培養部がその無血清の凍結液と、液体窒素に直接胚が触れない凍結方法で安全に胚凍結がうまくいくことを発表しました。
イスタンブール(トルコ)で開催された生殖医学会に参加して2012年8月1日
2012年7月1日~4日までの4日間、トルコのイスタンブールにて開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加させて頂きました。
今回の参加者は蔵本院長、口頭発表を行う研究部1名、培養士である私の3名でした。私にとって国外での学会参加は初めて・・・というより、海外に行くこと自体が人生2度目で、緊張以前に楽しみもありましたが、少々不安もあり、フライト前日は小学生時代の遠足前日のような気持ちで、久しぶりに眠れませんでした。
今年の学会の参加人数は8518名、参加国は118か国、口頭発表249題、ポスター発表600題でした。
昨年も口頭発表を行った研究部の村上は、今年はなんと世界で5名しか選出されない学会賞候補の一人に選ばれました。
血清中のアルブミンは細胞の増殖などに欠かせない成分で、培養液や凍結液にも含まれています。現在、動物由来のアルブミンを用いていますが、育ってきた環境によってそれらの成分は変わりますし、感染の可能性もないとは言えません。そこで、より安全な組換え結成(リコンビナントアルブミン)に代替できないか、今回はリコンビナントヒトアルブミンを凍結液に添加した胚盤胞凍結の成績について発表を行いました。
惜しくも学会賞を受賞することはできませんでしたが、世界に先駆けた有用な検討であることが認められました。また、この検討に私自身も関わっていることから、培養士という職業の重要さを再認識し、ますます意欲が湧きました。
ストックホルム(スウェーデン)で開催された生殖医学会に参加して2011年7月1日
今回2011年7月1日~9日の期間、毎年開催されるヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に初めて参加させて頂くため、スウェーデンのストックホルムに行かせて頂きました。
ストックホルムは「水の都」と言われるくらいに湖と海に囲まれた、自然のすばらしい所でした。
今回は院長、口頭発表を行う研究部1人、ポスター発表を行う胚培養士1人と私の4人の参加で、私にとって始めての海外で行われる学会参加で、看護師として私が参加する意味を考えさせられるものになりました。
ローマ(イタリア)で開催された生殖医学会に参加して2010年6月1日
2010年6月27日~30日でイタリアのローマで開催された、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加させていただきました。
ローマまでは飛行機で半日ほどのフライトで、時差は約9時間です。私は福岡を離陸するときから腕時計を現地時間にセットしてしまうくらい興奮していたので、往復のフライトではほとんど眠らずにローマに着きました。
今回の参加者は院長と培養室長、看護師である私の3名でうかがいました。参加者はほぼ年々増加しており、今回は総参加者数が約9200名、医師、培養師、看護職、臨床心理士といった日ごろから何らかの形で生殖医療にかかわっている様々な職種の方々がいらっしゃいました。
(さらに…)
アムステルダム(オランダ)で開催された生殖医学会に参加して2009年6月1日
2009年6月29日~7月1日までオランダのアムステルダムで開催されたヨーロッパヒト生殖医学会に参加してきました。
今年は看護部から2名で参加させていただきました。私たちにとっては、初めての海外での学会参加だったので、不安と緊張、期待と興奮の入り混じった気持ちで日本を出発しました。
アムステルダムと日本は時差が7時間程あり、現在はサマータイムということもあり、夜遅くまで明るい陽気な雰囲気を味わうことができました。また、運河や水路、跳ね橋といった美しい町並みも見ることができました。
会場では、世界各国の不妊治療に携わっておられる医師や培養士、看護師や心理カウンセラーなど様々な分野の方々が参加されていました。また、海外ならではなのかラフな服装での参加者が多く、日本の学会とはまた違う雰囲気を味わうことができました。
バルセロナ(スペイン)で開催されたヨーロッパ生殖医学会に参加して2008年7月1日
2008年7月6日~9日にスペインバルセロナで行われたヨーロッパ生殖医学会に参加してきました。
世界各国で不妊治療にたずさわっている医師や培養士、看護師、心理カウンセラーなど約7000名の参加があり、575題の演題が発表されていました。今年は演題を提出しても45%しか発表できない難関でした。日本からは約30題の演題が発表され、当クリニックからも看護部と培養部から2題の演題を発表してきました。