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第69回日本生殖医学会学術講演会に参加して2024年11月19日
医師の江夏です。
第69回日本生殖医学会に参加してきました。
この学会は生殖医療に関わる医師・胚培養士・看護師が参加する、国内で最も大きな学術集会と言っていいでしょう。
私もポスター発表をし、2日間の会期で多数の発表を聴講しました。
多くの意見が飛び交い、それぞれの検査や治療方法の有益性を示す報告が多数ありましたが、その中ではお互いの主張が反目するようなものも珍しくありませんでした。
聞きながら、大きく頷くこともあれば、首をかしげる部分もありました。
医学というと、医師は答えを知っていて、その答えをなぞるように治療をすると考えられがちです。しかし実際はその都度仮説を立て、最適解を探しながら診療にあたるということも多いものです。
学会に参加することは考え方の引き出しを多く持つきっかけになります。
我々は常に情報を集め、議論を重ね、目の前の患者様に何が奏功するのか、日々検討、精進する必要があります。
そして、蔵本ウイメンズクリニックはそうやって知識、技術をブラッシュアップし続けてきたクリニックです。
当院では私のような比較的若い医師も増えてきましたが、院長の背中を見て、その姿勢を受け継いでいます。
今治療で大変な想いをされている方も、一緒に頑張っていきましょう!
オーストラリア施設見学レポート2024年10月3日
医師の蔵本和孝です。
本日はオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ)2024の期間前後にパース1施設、メルボルン2施設の3施設を見学して来ましたので、ご報告します。
パースのMonash IVF Perthは院長が34年前に勤務していた病院の一つで、感慨深く見学をさせていただきました。
メルボルンのProf David Gardner labは、胚盤胞の分類法であるGardner分類を作られたGardner教授のクリニックで、Gardner教授より素晴らしいラボを見学させていただきました。また、当院からは培養室長の水本がPIEZO-ICSIの指導をし、交流を図りました。
オーストラリアのクリニックは、エコーを医師だけではなく、看護士も行っており、医師が時間をかけて説明することができます。
当院の外来では、患者様を長時間お待たせすることが多く、診療に関して更に見直していく必要があると感じさせられました。
しかし、オーストラリアはARTの件数に関しては、採卵件数こそ年間5万6千件と人口比で比較すると日本とほぼ同じですが、凍結胚の融解成功率は90%程度(当院は99%)であり、当院は高いレベルでの医療をご提供できていると思われます。
今回の施設見学において、当院が改善すべき点がいくつか見えてきたため、これからも皆様にスムーズかつ高度な治療をご提供できるよう、クリニック一同精進して参ります。
パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して(院長レポート)2024年9月30日
2024年9月にオーストラリアのパースで開催されたオーストラリア生殖医学会(FSANZ 2024)に蔵本和孝医師と培養室室長の水本と参加をしてきました。
FSANZでは胚培養液の開発で世界トップのデビット・ガードナー先生やアメリカのジャック・コーエン先生が培養室の全自動化について話され、近い将来のラボの方向性について示されました。
オーストラリアは移民も多く、わが国と比べて年々、人口・物価が増加しています。物価は以前の3倍以上にもなったそうです。
私達が最初に訪れたパースは、人口205万人を有する美しい都市です。
パースは私が1990年にオーストラリアの医師免許を所得して、PIVET Medical CentreでDr. Yovichの教えの元、体外受精の研修と実地を行った場所でもあります。
現在、PIVETはMonash IVF Perthと名称を変えていますが、建物の外観はほとんど変わっておらず、当時の懐かしい記憶のままでした。
今回34年ぶりにこの場所を訪れましたが、体外受精の妊娠率を向上させるべく、日夜働いていた若かりし頃の私を思い出しました。
お世話になったJohn Yovich先生は既に退職されており、現在はヨーロッパにお住まいで、お会いすることは叶いませんでしたが、お父さんそっくりの息子さんがエンブリオロジストとして働いておられました。
1990年にPIVETで働いていたとき、体外受精に対し、高度なチーム医療で臨まれていることに感銘を受けた覚えがあり、その当時、医師と検査技師のみで体外受精を行っていた日本では考えられないような素晴らしいシステムを見て、目から鱗が落ちたものでした。
この時、オーストラリアの地で生殖医療に一生を掛けよう、そして優秀なスタッフ(医師、サイエンティスト、エンブリオロジスト、IVFコーディネーター)を導入してチーム医療を行い、よりレベルの高い生殖医療を日本で行おうと心に誓いました。
これが1995年に開院する蔵本ウイメンズクリニックの原点です。
1990年、当時の卵巣刺激法は最も良い方法として、GnRHアゴニストのロングプロトコール法が主流でした。培養液は主にHTFという卵管液に似た初期胚を培養するもので、まだ胚盤胞を培養することは出来ませんでした。
FSANZ後はオーストラリア大陸を横断して、オーストラリア最大の人口を有する都市であるメルボルンへ移動し、親しくさせて頂いているメルボルン大学の教授でメルボルンIVFのサイエンティフィックディレクターでもあるデビッド・ガードナー先生の施設を訪問しました。
ガードナー先生は人の胚盤胞まで培養する培養液を世界で初めて作成し、また胚盤胞の質の評価法であるガードナー分類を考案された方です。今回、メルボルンIVFの中をガードナー先生自ら案内していただき、先生が考えておられる新しい技術等について情報交換を行いました。また、ガードナー先生の最新の著書を先生自ら私に贈呈していただきました。
当院培養室とガードナー先生は以前より協力関係にありますが、当院は先生が考案された「活性酸素を除去した抗酸化剤添加培養液」を用いた培養を行った結果、高齢患者に対する有用性を初めて確認し、水本培養室室長が2019年にアメリカ生殖医学会(ASRM)で発表してSRBT Basic Science Awardに選ばれ、表彰をいただきました。さらに水本室長の論文は海外の学術雑誌で発表されました。
続いて、N゜1 FERTILITYへも訪問しました。N゜1 FERTILITY はMonash大学のIVF部門の副院長であるDr. Lynn Burmeisterが6年前に開院したクリニックで、最近この場所に移転されたそうです。
スタッフは全て女性で、施設内の内装はピンクで統一されたカラフルな印象でした。クリニックには最新の機器が備えられておりました。今回3つの施設を見学しましたが、オーストラリアでトップクラスの施設はいずれも効率の良い診療を行っているように感じました。
今回のオーストラリア訪問を通じて、またガードナー先生や他の方々と交流し、今後もよりレベルアップしたクリニックを目指したいと思っております。
パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して2024年9月19日
医師の藏本和孝です。
今回、院長、私、水本培養室長の3人で、2024年9月14日から17日にオーストラリア(パース)で開催された、FERTILITY SOCIETY OF AUSTRALIA AND NEW ZEALAND ANNUAL CONFERENCE 2024 (オーストラリア、ニュージーランド生殖医学会)に参加しています。
パースは院長が34年前に留学、勤務を行なった場所で、蔵本ウイメンズクリニック発祥の地と言っても過言ではありません。期間前後で施設見学も兼ねていますので、後日ご報告させていただきます。
今回の学会で、私が印象に残ったトピックスとして、卵巣機能が低下している方に対する治療法がまとめられてありました。
国内での治療方法として、
①自己多血小板血漿(PRP)療法:(採血後、高濃度の血小板を卵巣内に注入する方法)
②PFC−FD療法(採血後、血小板中の成長因子のみを取り出して卵巣内に注入する方法)
③原始卵胞体外活性化法(IVA): (卵巣内に残った卵胞を体外で活性化させ、腹腔内に移植する方法)などが行われています。
また、海外では、
③ 自家幹細胞卵巣移植(ASCOT):(骨髄穿刺をして得た細胞から幹細胞を作成し、卵巣に注入する治療法で、治療2週間後の胞状卵胞数が81.3%の患者で上昇した)と報告されています。
卵巣機能が低下している症例に対してはまだ一定の治療法がありませんが、世界中で様々な方法が模索されています。
当院では特にPRPに注目しています。PRPは採血当日に卵巣内に血小板血漿を注入することができ、患者様の通院回数を減らすことも可能です。
PRPの子宮内投与は当院でもすでに行っておりますが、卵巣内投与に関しては、現在準備を勧めております。進展があり次第、皆様にご提示させていただきます。
最後に、通院患者様へのメッセージとなりますが、我々が不在の間に待ち時間が長くなり、大変ご迷惑をおかけしております。
10月、11月も学会が続きますが、皆様のベストとなる治療をご提示できるよう精進して参ります。
第48回日本遺伝カウンセリング学会学術集会(東京)に参加して2024年8月7日
医師の吉岡です。
8月3日〜5日、東京で開催された「第48回日本遺伝カウンセリング学会学術集会」に参加してきました。
コロナ禍でずっとオンライン参加をしていたので、現地参加は久しぶりでした。
この学会の参加者の多くは、医師と認定遺伝カウンセラー、認定遺伝カウンセラーを目指す人たちですが、染色体や遺伝子の異常で生まれつき障害を持つ人やその親の会の人たちなど、いろいろな人が毎回参加されています。今回は、NHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」のプロデューサーの方の講演もあり、そのドラマに出演されているダウン症の吉田さんと言う俳優さんも来られていました。
生まれつきの病気や遺伝性の病気は本当に色々なものがあり、そのことをまずは自分が知ること、そして、社会に知ってもらうことがとても大事であるということを、改めて考えさせられました。
アムステルダム(オランダ)で開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加して2024年7月20日
こんにちは、医師の江夏です。7月8-10日にオランダはアムステルダムで開催されたESHREに参加してまいりました。ESHREは生殖医療に関する最新の知見を発表する場で、世界中から医師・培養士・看護師などが参加する学会です。
当院からは私が参加し、ポスター発表をしてまいりました。他国からの参加者の発表を聞き、非常に勉強になったと共に、我々の行っている診療が世界標準レベルに達していると実感でき、非常に有意義な学会となりました。これからもより良い医療を提供できるように精進します。
どの発表も非常に多くの参加者が聴講していました。
参加者は134ヵ国より11647人!!
学会で発表するために応募された数は2218件。発表を許されるのはその半数程度です。
企業ブースでは最新の技術を企業から関係者に向けてプレゼンテーションしていました。