よくあるご質問
Q. 排卵障害とは?また、排卵誘発剤とは?その作用を教えてください。
A. 排卵障害とは、卵巣の中の卵の入っている袋である卵胞がうまく発育しない、または、うまく発育したとしても破れて中から卵が外に出ない状態を言います。原因として、中枢性(脳の方の問題)と卵巣性(卵巣の方の問題)に分かれます。
【中枢性】
視床下部性(自律神経に関係しています)と、下垂体性(眼の上にあるホルモンの中枢と言われている所)があります。
(排卵のしくみ)
1. 視床下部からGn-RHというホルモンが分泌されます。
2. それが下垂体に働き、その結果、下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)が出てこれが卵巣に働きかけます。
3. 卵胞のもとになる細胞にFSHが働き卵胞を発育させます。
4. 卵胞が十分に大きく(直径約20mm)成熟したら、下垂体から排卵を促すLHが大量に分泌され(LHサージ)、その結果排卵が起こります。
このステップのどれかに異常があれば排卵しない(排卵障害)と言う事になります。
(排卵障害の治療法)
<視床下部性>クロミフェン(商品名:クロミッド、セキソビッド)投与
この薬は、Gn-RHというホルモンを多く分泌させ、下垂体からのLH・FSHの分泌を促して卵巣に働き、卵胞の発育を促進させます。飲み薬で、卵巣に直接働きかけるのではなく、脳に働きかけてホルモンを増やすため、発育卵胞の数は多くはありません(1個~数個)。
<下垂体性>FSH製剤(商品名:フォリルモンP、ゴナールF、フォリスチム)
hMG製剤(商品名:hMGテイゾー、hMGフジ、hMGフェリング、hMGTYK)
これらの薬を、十分なモニタリング(エコーで卵胞を計測し、血中卵胞ホルモンを測定)を行って注射量を調整しながら筋肉注射します。
【卵巣性】
現在のところ、有効な排卵誘発剤はありませんが、時にカウフマン療法やhMG製剤を用いて排卵につながることもあります。
Q. 最近は男性の精子が少なかったり、閉塞性無精子症のため妊娠に至らないケースもありますが、この場合の妊娠の可能性は?
A. 精子濃度が精液1ml当たり2,000万未満の場合や、精子の直進運動率が50%未満の場合は、普通の夫婦生活では妊娠しにくいと言われています。
1. 軽度に精子の状態が不良な場合
御主人に薬物療法(漢方薬やカリクレイン等)を行って、精子の状態を改善します。精子は、元の精粗細胞から成熟した精子になるまで、約3ヶ月掛かります。そのため、3ヶ月経っても精子性状が改善せず妊娠に至らない場合は、薬物療法が効かないことが考えられるので、人工授精(IUI)を行います。
2. 運動精子濃度が1,000万/ml前後の方
御主人に薬物療法を行いながら、人工授精(IUI)を行います。これでも妊娠に至らない場合は、体外受精となります。
3. 運動精子濃度が500万/ml以下の方
人工授精では、ほとんど受精は困難と考えられます。当日の精子数、運動率、奇形率等を見ながら、ご夫婦の希望も伺った上で、体外受精(IVF)にするか、顕微授精(ICSI)にするかを決めます。
4. 運動精子濃度が300万/ml以下の方
体外受精でも受精することは非常に困難です。確実に受精する可能性のある顕微授精(ICSI)をお勧めしています。また、閉塞性無精子症等の方の場合には、精巣から精子を採取する方法(TESE)や、精巣上体(副睾丸)から精子を採取する方法(MESA・PESA)で顕微授精(ICSI)すれば、妊娠、出産できます。また当クリニックでは、95年に国内で初めて人工精液瘤(じんこうせいえきりゅう)と呼ばれる、精液を溜める人工の袋を使った治療法で妊娠に成功しました。
5. 無精子症の方
御主人のホルモン値、LH、FSH、テストステロンや精巣の大きさ、染色体の検査をします。無精子症には、精子の通り道がつまっていたり、一部が欠損した閉塞性無精子症と、通り道は通っていても射精後精液中に精子が見られない非閉塞性無精子症があります。閉塞性無精子症は、必ず精巣内に精子が見つかります。精巣の一部を採取(TESE)し、この精子を用いて顕微授精を行うことで、受精・妊娠が可能となります。非閉塞性無精子症の方は、精巣内に精子が見つかる場合は、同様に顕微授精を行うことができます。
Q. 子宮筋腫がある場合、不妊治療を行うのに影響はありますか?
A. 小さな子宮筋腫を合併している女性はかなり多く見られます。通常は、特に手術や薬物療法はせず、そのままにして不妊治療および妊娠・出産は可能です。妊娠された場合、子宮筋腫が大きくても出産できると考えられますが、子宮全体がほとんど子宮筋腫であるような重症の場合には、胎児の発育が妨げられ、流産・早産の原因となることがあります。
また、子宮筋腫が大きく採卵がうまく行えない場合には、あらかじめ子宮筋腫核出術を行って子宮の容積を小さくし、採卵をしやすくする場合もあります。
Q. 体外受精や顕微授精でできた子供と、自然妊娠による子供とでは、奇形率が違うのですか?
A. 現在のところ、差は無いと言われています。自然妊娠の場合でも、体外受精や顕微授精の場合でも2~3%ぐらいだと言われています。
Q. 子宮内膜症があれば、妊娠しにくいですか?もしあれば、子宮内膜症の治療を先に行ったほうがよいのでしょうか?
A. 子宮内膜症とは、子宮内膜と同じような組織が、子宮内膜とは違う部位で増殖する病態をいいます。好発部位は、卵巣内(チョコレートのう胞)、子宮周囲の腹膜などです。
子宮内膜症は必ずしも不妊の原因とはなりませんが、炎症を起こして癒着しやすくなります。卵管周囲や卵巣周囲に子宮内膜症があり、癒着が起きた場合、排卵しにくくなったり、卵管采が卵子をピックアップしにくくなるため、不妊の原因となります。また、卵巣にできた子宮内膜症(チョコレートのう胞)が大きくなってきて、卵巣の実質容量が少なくなり、卵子が減ってきます。子宮内膜腫の診断は、月経痛などの症状があったり、エコーで卵巣にチョコレートのう胞が見えたりし、腹腔鏡検査で子宮内膜症を確認します。
当院の方針としては、まず卵管の検査を行い、疎通性がよければ、よほど症状が強くない限りは不妊治療を優先し、妊娠していただくことを目指しています。その理由として、子宮内膜症の治療の一つには、薬物療法(Gn-RHアゴニストのスプレーや皮下注射、ダナゾールの内服)があり、約6ヶ月間治療しますが、これでも子宮内膜症は完治せず、ほとんどの場合治療終了後数ヶ月で再発してしまうことが挙げられます。また、薬物治療中は避妊しますので、妊娠できない期間が長くなります。これらの理由から、月経痛には鎮痛剤を併用しながら、まず不妊治療を優先していきます。卵管采の癒着が強く疑われる場合には、腹腔鏡検査を行います。このとき癒着があれば、腹腔鏡下で癒着剥離術を行います。しかしこの場合も、必ずしも子宮内膜症が完治しないことがあり、よく再発します。また、卵巣チョコレートのう胞を腹腔鏡下で摘出しますが、その際に止血のため電気凝固等を用いると、術後の卵巣の卵子が減少します。子宮内膜症は、不妊症の方の約半数にみられると言われています。一般不妊治療で妊娠が見られない場合には、体外受精に進んでいきます。
Q. 検査や治療をこれから行っていく上で仕事との両立は可能ですか?
A. 当院に通院している患者さんの半数以上は何らかのお勤めをされています。お仕事を持たれている方は、上司に治療のことを話され、治療に通いやすいように協力依頼されている方もいます。お近くにお勤めの方でどうしてもお仕事を休めない日に人工授精を行う場合に、朝、精子を提出しておき、昼休みを活用されて人工授精される方もいます。
タイミング法や人工授精のための排卵日についても、尿中LH検査(クリアプランテスト)をご自宅で行って頂くことで、血液検査などでご来院頂くことなく患者様ご自身で排卵日を予測することができ、通院回数を抑えることができます。クリアプランテストは、排卵が近づくと尿中にLH(排卵を促すホルモン)が排出されることを利用した検査方法で、スコアが3または4になったら、夫婦生活を持ち自己タイミングをとって頂くか、当日または翌日に、精子を専用の容器で持参のうえ来院して頂き、人工授精を行います。
精液検査や人工授精の精液は当院の精液採取用の容器に入れ、採取後3時間以内に当院に持参されれば、ご主人が来院されなくても検査や治療は可能です。検査は生理周期に合わせて行うものもありますが、融通がきく検査もございます。できる検査から行う事もできるので、勤務に合わせてご相談ください。
ART(高度生殖医療)の場合、排卵誘発剤開始から採卵日まで、個人差はありますが、月経2~3日目の受診、採卵が決まるまでに3日くらいの受診、採卵日、採卵後の診察日と、トータル6日程度の通院が必要かと思います。通常、排卵誘発をアンタゴニスト法、ロング法、ショート法で行う場合、連日注射が必要ですが、注射開始から5日間くらいは在宅自己皮下注射を行って頂くため、その間は通院の必要はありません。また、遠方の方の場合、採卵が決まるまでの診察(ホルモン採血やエコー)を、卵胞計測が出来る近くの婦人科で受けて頂くことも可能です。この場合、注射開始後、何日目に診察をし、どの時点で当院へ連絡していただくかなどを記載した担当医宛の紹介状をお渡しします。(近くの婦人科で診察を希望される方は、治療計画時あるいは排卵誘発剤開始時にお伝えください。卵胞計測をしてもらえる婦人科でないと診察を依頼することができません。ご希望の方はご相談ください。)
注射を開始しても卵胞の発育が遅い場合、その分注射本数が増え、通院回数も多くなります。逆に急に卵胞が発育し、予想していた採卵日より早く採卵日が決定することもあります。卵巣の働きには、個人差があり、その月によっても卵巣の反応が違いますので、都合をつけるのは大変かもしれません。しかし、妊娠できる期間というのは、決まっていますので、良い時期に良い卵を採るのは大事なことです。採卵までは頑張って通院の都合をつけてください。
Q. 初診の予約はどうしたらよいですか?
A. 治療説明会を受講された方は、受講後当日にクリニック内で、優先枠で予約をお取りしています。受講後、後日予約を取られる方は、電話で治療説明会を受講したことをお伝えいただければ優先枠で予約がお取りできます。説明会受講をされていない方は、電話で予約をお取りしますので、ご相談ください。
Q. 初診日は生理何日目に受診したらいいですか?
A. 生理の周期に関係なく受診出来ます。必ずしも生理中の検査から開始する必要はございませんので、来院できる日に予約していただき、できる検査より開始していきます。
Q. 初診日は夫婦で来院が必要ですか?
A. <一般不妊治療の場合> 一般不妊治療説明会受講後の予約は、優先枠を設けておりますので、奥様の来院できる日にお一人で来院して下さい。ご主人の精液検査をいつするかは初診時に決めますので必ずしもご夫婦の来院でなくても構いません。説明会を受講されていない方の予約は、精液検査の時間も予約内に設けております。ご夫婦で来院いただけるとご夫婦の検査が行えます。
<ART(高度生殖医療)の場合> お二人の都合が合えば、ご夫婦そろっての受診が望ましいですが、無理な場合は奥様だけ初診で受診していただき、後日、精液検査、ご主人の採血(肝機能検査、感染症検査)の受診で構いません。
また、精液検査は、当院から自宅までが3時間以内の方であれば、自宅で採取した精子を奥様が持参(当院指定の容器をお渡しします)頂くこともできます。
Q.初診日の待ち時間はどれくらいですか?診察は、毎回、完全予約制ですか?
A.初診日は、まず、看護師による問診を行い、その後、医師の診察があり、治療計画を立てていきます。これまでの経過や治療歴等について詳しく聞かせていただき、今後の方針を決定していきますので、半日を目安に考えておいてください。また、説明会を受けた方は、治療内容についての詳細な説明は省かせていただきますが、不明な点がございましたら問診時や医師にご相談ください。診察は完全予約制になっております。月経周期や診察内容に合わせ、診察日が決まっていきますので医師の指示日に予約をしていただき来院となります。診察のご予約は、携帯電話、パソコンからも可能です。
Q.一般不妊検査をするには何回受診したらいいですか?
A.生理周期で、その時期にしかできない検査といつでもできる検査があります。
- ・生理4日目頃までに1回【ホルモン基礎値(LH,FSH,プロラクチンなど)やエコー検査など】
- ・生理の出血終了後に1回【卵管の通りをみる検査】
- ・排卵日前に1~3回(排卵日の特定には個人差があります)【卵胞発育チェック(エコー),頚管粘液検査,尿中LH検査,フーナーテスト(性交後夫婦間適合性検査)など】
- ・排卵後に1回【黄体ホルモン(プロゲステロン),エコー検査(排卵チェック)】
以上の受診が必要になることが予測されます。
Q.ストレスが多いのですが、妊娠に影響はありますか?
A.強いストレス状態に長い間さらされると、脳の視床下部はその状態から体を守るための対応に追われます。この視床下部は排卵や妊娠に関わる生殖ホルモンの司令塔です。脳がストレス対応に追われると生殖ホルモンの分泌にまで手が回らなくなりますので妊娠への影響も考えられると言えます。
しかし、社会生活でストレスのない生活をするのは難しいですので、ストレスマネージメントに努めることをお勧めします。ストレス解消法にはリラックスする事が必要で、スポーツなどの趣味も良いと思います。
また、当院には心のケアを専門とする心理カウンセラーが毎週金曜日や隔週土曜日に個人カウンセリングを行っています。ストレスが溜まったときは上手にカウンセリングをご利用ください。(完全予約制)
この他にも、治療に関する相談で医師にはなかなか話せないことなどは、不妊症看護認定看護師が行う看護師外来を毎週木曜日の午後に行っていますので、そちらも合わせて利用してみて下さい。
Q.現在、他の病院で治療をしていますが、紹介状は必要ですか?
A.紹介状があればより良いですが、必ずしも必要ではありません。検査データのみお持ちの方は検査データのみ持参してください。重複して必要のない検査があれば省略いたします。(必要と思われる検査は再度行います)
これまでの治療歴や検査結果など、わかる範囲で結構ですので、問診票(問診入力ページより送信頂けます)にご記載頂くと、初診日当日にスムーズに問診を行えます。
Q.診察の先生は、主治医制ですか?
A.原則として、主治医制はとっていません。現在、院長、女性医師3名、男性医師1名の計5名で診察をしています。院長は生殖医療を35年以上、他の医師も15年以上のキャリアを持っており、安心して治療を受けていただけます。どうしても担当医師の希望がある場合は、受付時に希望を伝えられるか、あるいは、医師、看護師にご相談ください。
Q.排卵誘発法は、何種類かあると聞いたのですが、どのようにして選んでいくのですか?
A.年齢、月経初期に見える小卵胞数、卵巣予備能(AMH;抗ミューラー管ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)から総合的に判断し、どの排卵誘発方法や排卵誘発剤が適しているかを判断します。当院では、卵巣刺激法の基本指針があり、それを基にしながら個人個人の排卵誘発法を考え、医師が治療方針をお伝えし、患者様のご希望をお聞きしながら排卵誘発剤を最終的に決めていきます。通常は、7個以上の採卵数を目標に卵巣刺激を行いますが、卵巣予備能が低く、発育卵胞数が少ないと予想される場合は、低卵巣刺激法を選択することもあります。
Q.自己注射は、初めてです。大丈夫でしょうか?
A.ART(高度生殖医療)治療の場合、複数の卵胞を発育させるために、排卵誘発剤が必要となります。個人個人、排卵誘発方法は違いますが、自分で注射できない場合は、ご主人が注射の練習をして奥様に打つ方もいます。通院しての注射も可能ですが、日曜や夜の注射は、時間外となりますので、できれば自己注射をお願いしています。その場合、薬液を吸った状態で注射器をお渡ししますので、打つだけで大丈夫です。自己注射の練習は、生殖医療の経験豊富な看護師が時間をかけ、丁寧な指導を行いますので、ほとんどの方が一度練習をすればできるようになります。排卵誘発剤を打つ時間は、いつでも大丈夫ですが(時間指定の注射もあります)、トラブルがあった時にすぐに対応できるよう、できれば診療時間内に注射することをお勧めしています。
また、自己注射が困難で当院までの通院が困難な方、遠方の方の場合は、近くの婦人科で注射してもらうことも可能です。医師または看護師にご相談ください。
Q.排卵誘発中や採卵後、胚移植後、運動をしてもいいですか?安静にしておいた方が良いですか?
A.運動は、体内の血流がよくなるため冷え性改善や代謝アップにつながり、ダイエット効果やストレス発散にもなりますが、排卵誘発剤の注射をしていくと卵巣が腫れてくる場合があります。卵巣の反応には個人差がありますが、当院では安全のため注射を4~5日間連続して投与した後は、激しい運動は控えて頂くようにしています。また、排卵誘発中に発育卵胞数が多く、卵巣過剰刺激症候群(卵巣の腫れ、腹水が貯まる、下腹部痛など)になったり、過度な運動で卵巣茎(けい)捻転を起こす恐れがあります。症状としては、持続的な下腹部痛や下腹部の腫れなどの症状、エコー上卵巣が腫れている等です。更に血液検査で血液が濃くなる(血液が固まりやすくなり静脈血栓のリスクが高くなる、ふくらはぎの裏の痛みが出てくるなど)といった状態になれば安静や入院加療が必要なこともあります。
胚移植後は、当院では原則として全胚凍結をして、凍結胚の移植を行いますので生活の制限等は行っていません。胚移植後の安静が妊娠率には関係ないとの判断からです。ただし、結果が悪かった時、あの時の運動が悪かったのか、生活が悪かったのかと不安になるようであれば、ご自身にあった過ごし方をされてはどうでしょうか。
Q.採卵回数は、何回位を目安に考えたらよいですか?
A.治療回数の目安は、個人、個人違いますので一概には言えませんが、大まかな目安として、採卵を5回くらいとみています。当院のデータでは、比較的若いご夫婦の場合、採卵5回までで妊娠される方が多いという結果です。40歳以上の方でも、採卵を10数回以上行い、妊娠・出産される方もいますので、どこまで治療をするかは、ご夫婦でよく相談されることが大切です。当院では、治療のご希望があれば治療回数を制限することなく治療を行っています。
治療に関する悩みやご相談があれば個別に相談できる看護師外来や心理カウンセリングもありますのでご活用ください。
Q.痛みにとても弱いのですが。採卵時に眠る麻酔(静脈麻酔)を使ってもらえますか?
A.当院での麻酔方法は、局所麻酔と静脈麻酔の2種類です。どちらの場合も、採卵前に鎮痛剤のボルタレン座薬を肛門に挿入し、その後、手術室で局所麻酔を行います。
<局所麻酔だけの場合> 意識があるので卵胞穿刺をしている様子をモニター画面で見ることができます。安静時間が短め目ですみます。
<静脈麻酔(局所麻酔もします)の場合> 痛みに弱い方や発育卵胞数が多い方は、静脈麻酔をします。採卵中は眠っていますので卵胞穿刺の様子は見られません。麻酔剤を入れた後、すぐに麻酔が効き、採卵が終わるとすぐに目が覚める短時間作用の麻酔剤を使います。目が覚めた後、歩行ができるまでしばらく安静をとりますので、局所麻酔の方よりはやや安静時間が長くなります。発育卵胞数が少なくても、意識がある中で採卵するのが怖い方は、静脈麻酔も可能ですので、希望をお伝えください。
Q.体外受精や顕微授精で生まれた赤ちゃんは、障害を持つ確率が多いと聞きましたが本当ですか?
A.当院ではこれまでに一般不妊治療、ART治療あわせ1万3千人以上の方が妊娠し、8,300人以上の赤ちゃんが生まれています(2017年9月現在)。出産後の報告をみますと、自然妊娠で生まれた赤ちゃん、不妊治療で生まれた赤ちゃんとで障害を持つ確率に差はありません。ただし、一般的には、妊娠・出産時の年齢が高くなると、ダウン症候群の発生率が高くなる傾向があります。また、高齢での出産の場合、妊娠高血圧症候群や流産や早産、出産時の異常などのリスクが高くなりますので、安全な出産、健康な児を得るためにも早めの治療をお勧めします。
Q.40歳台の女性と35歳とでは、体外受精での妊娠率は違うのでしょうか?違うとしたらなぜですか?
A.当院のデータでは、採卵1回あたりの累積妊娠率を見ると、35歳では52.3%の妊娠率であるのに対し、40歳で29%と妊娠率が下がってきます。41歳では、27.5%、42歳で17.6%、43歳で14.2%、44歳で6.3%、45歳で1.5%という結果で、数字をみるとおり、年齢とともに妊娠率は低下してきます。40歳になったからといって劇的に妊娠力が落ちるわけではありませんが、卵子は35歳~37歳ころより急激に減り始め卵質も低下していきます。また年齢の上昇とともに卵子や胚(受精卵)の染色体異常も増えてきますので、40歳台の方は、30歳台の女性と比べるとどうしても妊娠率が下がり流産率も上がってきます。様々な不妊検査をしても原因がわからないこともあります。女性の年齢の上昇に伴う卵質の低下が不妊の原因でもありますので、40歳代は、一年一年が貴重な時間になります。現在、不妊治療を開始される平均年齢が30代後半となっています。不妊治療は、年齢との闘いとも言えます。40代の方以外でもAMH(抗ミューラー管ホルモン)が低い人などは、妊娠できる卵子が減っていますので、ご夫婦でよく相談され、早めの体外受精をお勧めします。
Q.たばこやアルコールは、治療に影響が出ますか?
A.たばこやアルコールは、活性酸素を増やす作用があり、卵子の老化の原因の一つとなると考えられます。精子も同様で運動率の低下や染色体異常の発生頻度が高くなるとう報告があります。ご自身が喫煙をされなくても、煙草を吸っている人のそばにいると同時に煙を吸うといったことになり(受動喫煙)、健康被害に遭います。たばこは、ニコチンの作用で血管を収縮させますので血流が悪くなり、卵巣への血流不足も考えられ、卵子数も減少します。また、喫煙習慣のある女性から生まれた赤ちゃんは、低体重児が多いといったデータもあります。たばこは、百害あって一利なしです。
アルコールに関しては、適度な飲酒であれば問題ありませんが、多量に摂取すると卵子や精子にもよくないと考えられています。どちらにしろ、たばこ、アルコールは体に良い影響を与えることはないので、禁煙はもちろんですが、アルコール摂取量にも気を付けてください。
Q.卵巣予備能とは何ですか?卵巣予備能が低下していると言われたのですがステップアップは早めた方がよいですか?
A.卵巣予備能とは、文字通り卵巣が有する潜在的な卵巣機能の予備力を示す言葉で、卵巣の中に残っている卵子数の目安と考えます。卵巣予備能を正しく評価できれば、患者さんがその時点で最も適した不妊治療は何かを推定することができます。卵巣予備能を評価できる指標の一つとしてAMH(抗ミューラー管ホルモン)検査があります。
AMHの値が低いと卵子が減っているという表れです。極端にAMHが低い場合は、閉経も早くなると考えられます。
しかし、AMHは、卵子の質を評価しているものではありません。AMHが低いからといって妊娠ができないわけではありません。採卵数が多くても妊娠できる卵子が採れるかどうかはわかりませんし、逆に採卵数が少なくても受精卵の状態が良ければ妊娠に繋がります。AMHやホルモンの数値を見て一喜一憂してしまいますが、卵子の質を高めるためにも医師は適切な排卵誘発を選択していきます。また、ご自身も日常生活(食生活や睡眠、運動など)に気をつけ、悔いのない不妊治療を行っていきましょう。
Q.夜間や日曜日など急に体調が悪くなった場合、診察してもらえますか?
A.排卵誘発剤の薬剤で気分が悪くなったり、卵巣過剰刺激症候群でお腹が張って痛くなる、採卵後、自宅で気分が悪くなるなど、体調不良等がある場合がまれにあります。まずは、安静にして、平日であればクリニックの診療時間内に受診してください。診療終了後、あるいは日曜祭日の場合は、時間外電話対応がありますので症状を医師に伝えてください。
Q.夫が出張が多く、採卵日当日に精子が出せないかもしれません。どうしたらよいですか?
A.採卵日の決定は、卵胞の大きさやホルモンの状態などをみながら採卵日を決めていきますので、最終的に採卵日が決まるのは2日前になります。採卵日が決まれば、当日精子が必要です。福岡県内の方や自宅から当院まで3時間以内に持参できる方であれば自宅で採った精子を持参してもらうことができますが、遠方の方や県内の方でも採卵日にご主人が不在の場合もあります。そういった不安がある方は、あらかじめ精子凍結をお勧めします。凍結精子を使う場合は、融解後、運動精子数が減りますので、原則として顕微授精となります。
Q.未婚カップルですが、ART治療はできますか?
A.以前は、夫婦でしか治療はできませんでしたが、現在は、未婚カップルのART治療が認められています。ただし、お互い未婚であるという証明(重婚でないことの証明)が必要ですので、それぞれの戸籍抄本を一通ずつと誓約書の提出が必要です。
※未婚の方の場合、不妊治療助成金の申請はできませんのでご注意ください。
Q.凍結した受精卵や精子の保存はいつまでできますか?
A.凍結している受精卵や精子は、液体窒素(マイナス196℃)が入ったタンクの中で保存をしています。理論的には、半永久的に保存は可能ですが、患者様全員の凍結胚や凍結精子を何十年も保管できるスペースがありませんので、当院では、凍結後、一年ごとに凍結を延長するか廃棄を希望するかの手続きをお願いしています。当院での凍結期間は、基本的には最長で5年ですが、それ以上の凍結延長をご希望の方は、相談の上、延長することも可能です。
また、がん治療患者様で、手術や抗がん剤治療前に卵子凍結、精子凍結をされる方もおられます。がん治療患者様の卵子・精子は貴重であるため、5年といった期間は設けておらず、希望がある限り保存をしております。ただし、一年毎の凍結延長手続きが必要です。また、女性が生殖年齢を超えてからの凍結延長は認められません。
Q.インフルエンザのワクチンは、不妊治療中、妊娠中でも打てますか?
A.インフルエンザのワクチンは、採卵周期・移植周期・妊娠中を含め いずれの時期においても 接種して頂いて構いません。