一般不妊治療とは
まずはスクリーニング検査で不妊原因を調べ、タイミング法、人工授精法(IUI)を行うことを一般不妊治療と言います。スクリーニング検査に関して詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
適切な検査、治療を行うことで、一般不妊治療でも十分妊娠できる可能性があります。
しかし、一般不妊治療での妊娠率は生殖補助医療(ART)と比較して低いため、適切なタイミングでの治療をご提示させていただきます。
一般不妊治療を勧めない方
- 抗ミューラー管ホルモン(AMH)値が低い方
- 妻の年齢が高い場合
- 難治性排卵障害がある場合
- 単身赴任等で一般治療が困難な場合
上記の方は、早期に生殖補助医療(ART)へのステップアップをお勧めしています。
タイミング法
タイミング法とは、性交渉のタイミングを指導することで妊娠率を上昇させる方法です。卵管検査と精液検査で問題のない方が対象となります。
タイミング法の流れ
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自然排卵のある方
月経周期10~12日目から経腟超音波検査を行い、排卵日を推定します。排卵日2日前~当日付近で複数回性交渉を行います。
排卵障害のある方
月経5日目頃に受診していただき、内服薬や注射を使用して卵胞を発育させます。
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タイミング法を行って、3-4週間経過しても月経が来なければ、ご自身で市販の妊娠検査薬で確認し、妊娠反応陽性となれば、1週間以内に受診をしていただきます。
経腟超音波検査で子宮内に胎嚢があるか確認をします。月経が来た場合は、医師の指示の通り(月経5-12日頃)に受診をしていただきます。
タイミング法の適応とならない方
- 卵管検査で異常がある
- 精液検査で異常がある
- 性交障害がある
- フーナーテストの結果がやや不良
- 抗精子抗体が陽性
- 自己タイミング法を既に半年以上されてきた方
など
卵管検査で卵管近位部(子宮に近い部分の卵管)に異常があった場合は、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行い、人工授精にステップアップすることも可能です。
それ以外の方は、人工授精もしくは生殖補助医療(ART)にステップアップすることを検討します。
38歳以上の方はART(生殖補助医療)にステップアップすることをお勧めしています。
タイミング法の治療成績
何回目のタイミング法で妊娠に至ったか

※2001年〜2023年 タイミング法で臨床的に妊娠した1,774件の集計
上の図はタイミング法による妊娠は何回ぐらいが効果的かを示したグラフです。
タイミング法1周期では39%、2周期目では25%、3周期目で14%と回数を重ねるごとにその効果は低下します。タイミング法で妊娠された方は治療回数3周期目までで78%、5周期目まで93%の方が妊娠されています。タイミング法の目安としては、3~5回までとなります。
不妊期間別タイミング法の効果

※2001年〜2023年 タイミング法で臨床的に妊娠した1,468件の集計
上の図は、不妊期間別のタイミング法による妊娠者数です。
不妊期間が短いほどタイミング法での妊娠数が多いことから、不妊期間が長い方は、人工授精以上の治療をお勧めしています。
人工授精(IUI)
人工授精(IUI)は、卵管検査で問題がなく、精液検査が正常またはやや不良なご夫婦が対象となります。また、タイミング法を3~5回行っても妊娠されなかった方、フーナーテストが不良だった方、性交障害のある方、自己タイミング法が長い方も対象となります。
人工授精の流れ
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月経5日目頃
超音波検査を行い、卵胞の大きさを調べます。
※必要な場合に排卵誘発剤(薬や注射が処方されます)
※排卵日の検査までに何回か注射を打つために通院が必要になることがあります。
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月経開始10日目~15日目頃
尿中LH検査、超音波検査を行い、卵胞の発育、排卵の時期を調べ、人工授精の日程を決めます。卵胞発育の程度により数回の通院が必要になることがあります。
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人工授精当日
排卵日またはできるだけそれに近い日に精液を提出していただき、精液の処理後、子宮内に注入します。
必要に応じて、着床に必要な黄体ホルモン剤が処方されます。 -
妊娠判定
人工授精を行って、3-4週間経過しても月経が来なければ、ご自身で市販の妊娠検査薬で確認します。
妊娠反応陽性となれば、1週間以内に受診をしていただき、経腟超音波検査で子宮内に胎嚢があるか確認をします。月経が来た場合は、医師の指示の通り(月経5-12日頃)に受診をしていただきます。
人工授精の料金
保険診療 約8,000円
人工授精の適応とならない方
- 卵管検査で異常がある
- 精液検査が不良である
- 抗精子抗体が強陽性
- 様々な理由で排卵日に精子提出が困難な方
など
卵管検査で卵管近位部(子宮に近い部分の卵管)に異常があった場合は、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行い、人工授精を行うことが可能です。
それ以外の方は、ART(生殖補助医療)にステップアップすることを検討します。
人工授精の治療成績
人工授精は3~5回の実施で妊娠に至る方が多いとされており、6回以上繰り返しても妊娠率の上昇はあまり期待できないという報告があります。
そのため、当院では人工授精は通常3~5回行い、妊娠に至らない場合は生殖補助医療(ART)へステップアップします。
人工授精(IUI)1回あたりの年齢別妊娠率

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年齢 妊娠件数 実施件数 29歳以下 310 2947 30~34歳 946 10045 35~39歳 745 9502 40~42歳 108 2086 43~45歳 11 516 46歳以上 0 112
※2001年〜2024年 総数:25,208件
何回目の人工授精で妊娠に至ったか

※2001年〜2023年 人工授精で臨床的に妊娠した2,035件の集計
人工授精における妊娠率は、女性の年齢や体の状態により大きく影響を受けます。
一般的に、女性の年齢が上がるにつれて卵子の質は低下し、それに伴い妊娠率も低下する傾向があります。当院で人工授精により妊娠された方の約64%は2回目までに、約80%は3回目までに、約90%は4回目までに妊娠に至っています。なお、人工授精を行う回数は、AMH(抗ミュラー管ホルモン)値、女性の年齢、不妊の原因、これまでの治療歴などを総合的に考慮して判断しています。
まずは当院の不妊治療の流れをご覧いただき、適切な治療方針について医師とご相談ください。
当院の精液処理法
当院では人工授精の際に、精液処理をMigration-gravity sedimentation method(MIGRIS)で行っています。精液所見が良くない場合は従来のアイソレートによる攪拌密度勾配遠心法で行います。

密度勾配遠心法

治療について