福岡の不妊治療先進医療(顕微授精、胚移植など)

先進医療とは

先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術のうち、公的医療保険の対象になっていないものを指します。先進医療は自費診療となる技術ですが、一定基準の有効性・安全性を満たすもので、保険診療との併用が認められています。

先進医療は、将来的に保険適用となる事を目的として、その治療効果についての調査・研究が行われています(調査・研究は、個人情報保護法に則りプライバシーや個人情報に留意して行われます)。

福岡県では不妊治療における経済的負担を軽減するため、保険診療と併用して実施した「先進医療」に係る費用の一部が助成されることになりました。(保険診療分は対象外です)
詳しくは福岡県のホームページより福岡県不妊に悩む方への先進医療支援事業のページをご参照ください。

当院で実施可能な先進医療

顕微授精・胚(受精卵)培養に関するもの

タイムラプス

  • 先進医療技術名
    タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
  • 料金
    25,000円
  • 対象
    初回採卵周期から可能

タイムラプスは、培養器に内蔵されたカメラによって卵子の受精過程・胚(受精卵)の発育過程を経時的に撮影し、動画として記録する事が出来るシステムの事です。卵子・胚を外的ストレス(外気・光・温度変化)に曝すことなく観察する事が出来る他、受精の兆候を見落とす事がないため、正常受精の判定を正確に行う事が出来ます。当院では、Vitrolife社のEmbryoScope+という装置を採用しています。

タイムラプス

PICSI(ピクシー:Physiologic intracytoplasmic sperm injection)

  • 先進医療技術名
    ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術
  • 料金
    23,000円
  • 対象
    顕微授精となる方、初回採卵周期から可能

卵子の表面はヒアルロン酸に覆われています。成熟した精子はヒアルロン酸への結合能力が高いこと、成熟度が高いほど精子のDNAがダメージを受けにくいことが知られています。PICSIは、ヒアルロン酸が高濃度で含まれる培養液に結合した精子を選択することで、良好な精子を選別し顕微受精を行う方法です。

ヒアルロン酸に結合した精子
ヒアルロン酸に結合した精子
結合した精子をピックアップして使用
結合した精子をピックアップして使用

IMSI(イムジー:Intracytoplasmic morphologically selected sperm injection)

  • 先進医療技術名
    強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術
  • 料金
    12,000円
  • 対象
    奇形精子が多く顕微授精となる方、初回採卵周期から可能

精液中には正常形態精子と奇形精子が混在しています。当院では通常600倍に拡大して精子の選別を行っていますが、IMSIは超高倍率(1000倍以上)でさらに詳細な精子形態を観察する方法です。高倍率下で観察する事で、通常倍率では確認出来ない頭部の空胞(DNAのダメージが疑われる)を持つ精子を除く事が可能です。

通常倍率
1000倍

通常倍率

1000倍

ZyMōt(ザイモート)スパームセパレーター

  • 先進医療技術名
    膜構造を用いた生理学的精子選択術
  • 料金
    25,000円
  • 対象
    採卵周期が2回目以降で顕微授精となる方

良好な精子は上に向かって泳ぐ性質があります。ZyMotは、上に向かって泳いだ精子がさらに小さな孔が開いたフィルターで選別される構造の器具です。また、密度勾配法のように遠心分離を必要としないため、精子に及ぶ物理的ダメージを軽減する事が出来ます。

ZyMōt(ザイモート)スパームセパレーター

胚移植に関するもの

EMMA/ALICE(エマ/アリス:Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis/Analysis of Infectious Chronic Endometritis)

  • 先進医療技術名
    子宮内細菌叢検査
  • 料金
    56,000円 <再検査>33,000円
  • 対象
    反復着床不全、または子宮鏡検査で慢性子宮内膜炎を疑う所見があった方

今まで子宮内は無菌状態であると考えられてきましたが、近年、子宮内にも細菌叢が存在することがわかってきました。善玉菌であるラクトバチルスの減少は、着床不全や流早産と関連することが示唆されています。

下記の検査により、善玉菌が減り、悪玉菌が増えている場合には、推奨される治療(抗生剤治療など)を行うことで細菌叢が改善することを期待します。

  • 子宮内膜マイクロバイオーム検査
    (EMMA)

    子宮内膜の細菌の種類と割合を測定し、子宮内の細菌叢のバランスが正常かどうかを調べる検査です。善玉菌のラクトバチルスが十分にいるか、その他の細菌の種類や割合から推奨される治療を提示します。

    子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)
  • 感染性慢性子宮内膜炎検査
    (ALICE)

    慢性子宮内膜炎の原因となる菌(悪玉菌)の有無を検出します。悪玉菌が存在する場合は、その種類や量により推奨される治療を提示します。
    検査方法は子宮内膜組織を少量採取して検査に提出します。

    子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)

出典:https://www.igenomix.jp/endometrium/authentic-era/

ERA(エラ:Endometrial Receptivity Analysis)

  • 先進医療技術名
    子宮内膜受容能検査
  • 料金
    110,000円
  • 対象
    形態良好な胚盤胞移植を複数回行っても着床しない反復着床不全の方

子宮内膜受容能検査(ERA;Endometrial Receptivity Analysis)は、通常の胚移植を行う時期に、子宮内膜が遺伝子レベルで胚を着床させる準備ができているか(着床ウィンドウが開かれているか)を調べる検査です。

反復着床不全の約3割に着床ウィンドウのずれがあることが報告されています。 着床ウィンドウがずれている場合には、良好胚を移植しても妊娠が成立しません。 通常の時期より前方または後方へ時期をずらして移植を行った方が良いのかを248 種類の着床に関わる遺伝子を解析することで判定します。

実際に移植を行う周期と同じ薬剤(エストロゲン・プロゲステロン製剤等)を使用して子宮内膜を調整し、胚盤胞移植を行う日にあたる日の子宮内膜組織を採取します。
専用の細い管状の器具を子宮腔内に挿入し、子宮内膜組織を少量採取します。

※組織を採取した周期に胚移植はできません。
約3週間後に出る解析結果に沿って、問題なければ同様の薬剤を使用して胚移植を行います。着床ウィンドウのずれがある場合には、ずれを補正して個別化された胚移植を行うことで着床率の改善が期待できます。

子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)

出典:https://www.igenomix.jp/endometrium/authentic-era/

Endome Trio 検査(エンドメトリオ検査:EMMA/ALICE検査とERA検査のセット検査)

  • 料金
    137,500円

1回の検体採取で着床不全に関する上記3つの検査を同時に行うことが可能です。
また、同時に行うことで、料金の減額が可能になります。

SEET法(シート法)

  • 先進医療技術名
    子宮内膜刺激術
  • 料金
    35,000円
  • 対象
    形態良好な胚盤胞が凍結できた方

子宮内膜刺激胚移植法(SEET: Stimulation Endometrium Embryo Transfer)の略です。
胚盤胞移植の数日前に、胚盤胞が入っていた培養液をあらかじめ子宮に注入することで、胚盤胞から分泌された因子が働いて子宮内膜を着床しやすい状態にし、妊娠率が向上すると考えられています。先立って、採卵時に胚盤胞までの培養を行い、胚盤胞が入っていた培養液を胚とは別に凍結しておくことが必要です。

形態良好な胚盤胞ができた場合は培養液を凍結し、胚移植周期に培養液を子宮内に注入することで妊娠率が上昇したという報告があり、当院では形態良好な胚盤胞を凍結できた方がSEET法の対象としています。

  • 採卵周期

    採卵周期
  • 移植周期

    移植周期

子宮内膜スクラッチ

  • 先進医療技術名
    子宮内膜擦過術
  • 料金
    27,000円
  • 対象
    反復着床不全の方

子宮内膜擦過術の機序(メカニズム)については、正確な詳細はまだ完全に解明されていません。子宮内膜に細かい傷をつけると、傷の修復のためにサイトカイン(タンパク質)が分泌され、胚の着床の促進・免疫反応の正常化が促されると考えられています。胚移植を予定している一周期前の黄体期に、子宮内膜細胞を採取する器具を子宮内に挿入し、数回回転ことにより子宮内膜の擦過を行います(スクラッチ)。

子宮内膜スクラッチ

二段階胚移植法

  • 先進医療技術名
    二段階胚移植術
  • 料金
    50,000円
  • 対象
    SEET法を行っても妊娠が成立しなかった方

二段階胚移植術とは、分割期胚をまず移植し、その2、3日後に胚盤胞を移植する方法です。先に分割期胚を移植することで、胚が子宮内膜に働いて、子宮内膜を着床しやすい状態にし、その上で胚盤胞を移植すると妊娠率が向上すると考えられています。しかし一方で、胚を2個移植するため、双胎妊娠になるリスクが高まります。また、まれには一卵性双胎が発生し、品胎妊娠になることもあります。

二段階胚移植法

不育症、反復流産に関するもの

β2GPIネオセルフ抗体

  • 先進医療技術名
    抗ネオセルフβ2グリコプロテインI複合体抗体検査
  • 料金
    34,000円
  • 対象
    不育症(2回以上の胎嚢確認後の流産・死産)と診断された方

β2GPIネオセルフ抗体とは、近年新たに発見された自己抗体で、血管の炎症を引き起こすことにより血栓ができやすくなり、反復着床不全・不育症の原因の1つになると考えられます。

β2GPIネオセルフ抗体

β2GPIネオセルフ抗体の検査陽性率は反復着床不全の方と子宮内膜症に罹患している不妊症の方の約30%、不育症の方の約20%と報告されており、原因不明の不育症の方でβ2GPIネオセルフ抗体のみが陽性となる場合もあります。

抗体陽性の場合には、血栓予防のための低用量アスピリン療法やヘパリン療法を実施することにより、治療後の妊娠率の改善や生児獲得率が増加すると考えられます。