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第29回日本IVF学会学術集会に参加して(培養室長レポート)
培養室長の水本です。
9月26~27日に城山ホテル鹿児島で開催された第29回日本IVF学会学術集会に、院長、私、胚培養士の氏福、計3名で参加してきました。
私は今回臨床エンブリオロジスト学会セッションにおいて座長を務めさせていただき、
氏福は「ICSI後に認めた2PN-1PB胚の特徴に関する後方視的検討」と題した発表を行いました。

タイムラプスシステムを使用して受精卵(胚)の観察を行うと、従来の定点観察では見えて来なかった様々な特徴が明らかになります。
当院ではタイムラプスシステムの導入以降、それらの知見を精査してより良い胚を選択するための研究を続けています。【国際生殖医学会(IFFS2025 world congress)に参加して(培養室長レポート)】
また、良い胚を選択する事と同等に大切なのが、治療に使用するには適切でない胚を検出する事です。
正常な受精卵は、顕微授精の後に第2極体として染色体の半数を細胞外に放出し、卵子側および精子の2個の核が形成された、いわゆる「2PN-2PB」と言われる状態にあります。
しかしながら、第2極体の放出が上手く行われず卵細胞内に残ってしまうケースや、極体は放出しているものの染色体の分配が不十分で、細胞内に複数個の核が形成されてしまうケースが確認される事があります。
こういった受精卵は高確率で染色体の数的異常を持つため、たとえ発育したとしても、移植後に挙児は望めません。
今回着目したのは、「2PN-1PB」という状態の受精卵です。
2個の核を持つため一見すると正常な受精卵なのですが、第2極体を持たず放出されるはずの染色体が細胞内に残存していると考えられます。
われわれ胚培養士は平素厳密に観察を行っていますが、人間ですのでどうしても先入観が働きます。細かな違いに気づくためには特に注意すべきチェックポイントが必要です。
今回の報告は、2PN-1PBになった卵子は顕微授精時どのような状態だったのか、どのような症例に起こったのかを調査したものです。
調査の結果、形態不良であったり染色体の分裂装置である紡錘体が不明瞭な卵子に起こりやすい事が分かりました。
我々が行う治療は、基礎生物学的な知見に基づいて行われています。
しかしながら、今まで常識だと思っていた現象が大きく覆される場合や、これまではやむを得ず行われていた方法が治療のスタンダードになるケースもあります。今まで異常卵として治療に使用していなかった受精卵の中にも、本当は子供になる運命のものが含まれていたかもしれません。
温故知新とはまさにその通りで、基本には忠実に、その上で新しい知見を柔軟に取り入れながら、より良い治療方針を構築していきたいと考えております。


