| 学会参加レポート,ドクターブログ
第28回日本IVF学会学術集会報告(蔵本院長)
院長の藏本武志です。
2025年10月11日から沖縄で開催された第28回日本IVF学会学術集会に参加しました。
私は2019年に福岡市で日本IVF学会を会長として開催し、このたび学会より功労会員の表彰を賜りました。ここに、そのご報告を申し上げます。
■ 世界のARTの現状
世界の生殖補助医療(ART)の実態を調査したICMARTの報告によれば、これまでに少なくとも1,200万人以上がARTによって誕生しています。
治療周期数では日本は中国に次いで世界第2位に位置しており、日本の生殖医療が世界的にも非常に重要な役割を果たしていることが示されています。
■ 生殖免疫に関する最新知見
生殖免疫分野の講演では、精液中の精漿に着床に関わる免疫物質が含まれており、凍結胚融解移植の際にプロゲステロン膣剤を投与開始する頃に夫婦生活を持つことで着床率が高まる可能性があるとの興味深い報告がなされました。
免疫と生殖の関係について、今後さらなる研究の進展が期待されます。
■ CAPA-IVM(未成熟卵子体外成熟)について
排卵誘発剤を用いずに10mm以下の卵胞から未成熟卵子を採取し、体外で成熟培養するIVMの報告も注目を集めました。
IVMは、卵子核と細胞質の成熟を均等に進めることが難しく、通常のARTに比べて受精率や胚盤胞到達率、妊娠率が低いことから日本では保険収載されていません。
そのため、当院では医学的適用または社会的適用(ノンメディカル)の卵子凍結を希望される患者様の未成熟卵子に対してIVMを実施しています。
一方で、CAPA-IVMシステムは二段階のIVM培養を行い、約2日間かけて卵子核と細胞質の成熟を制御することで、従来法よりも成熟率・胚発生率の改善を図る新しい手法です。
ベトナムの施設ではこれまでに3,000周期以上のCAPA-IVMが行われ、900人以上の出生例が報告されています。
■ まとめ
今回の学会では、生殖医療のさらなる可能性を感じるとともに、今後の臨床に活かすべき多くの知見を得ることができました。
これらの情報をもとに、当院でもより安全で効果的な治療の提供を目指し、引き続き日本の生殖医療の発展に貢献してまいります。