フィラデルフィアで開催された生殖医学会(ASRM)に参加して
カテゴリー: 学会参加レポート 2019年11月20日
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発表の様子(長尾)
2019年10月11日から16日にアメリカのフィラデルフィアで開催されたアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加してきました。
当院からは、培養部から2名、研究部から1名、計3名が参加しました。培養部からは私が「SIMPLE VITRIFICATION OF A SMALL NUMBER OF TESTICULAR SPERMATOZOA USING RAPID-I CARRIERS IN NON-OBSTRUCTIVE AZOOSPERMIA」という演題で口頭発表を行いました。非閉塞性無精子症患者様のTESE精子をRapid-iという凍結器具により少数精子凍結を行うことで、融解後効率よく精子を見つけ出すことができ、その後生児獲得にも至ることができたという内容です。Rapid-iを用いた少数精子凍結法は、通常のチューブによる精子凍結法に比べて、融解後の精子回収率がよく、精子生存率が飛躍的に改善されます。精子数が極めて少ない方の精子凍結においては、非常に優れた凍結方法です。初めての国際学会での発表で、英語も苦手ということもあり緊張しましたが、無事に終えることができました。
研究部の村上主任は「INFLUENCE OF COMMERCIAL EMBRYO CULTURE MEDIA ON IN VITRO DEVEROPMENT, PREGNANCY, AND PERINATAL OUTCOMES AFTER IVF: A SINGLE-CENTER RCT」という演題でポスターの発表を行いました。培養液はART(体外受精、顕微授精)での胚の体外培養において欠かせないものですが、安全性や有効性、さらに長期的な影響も踏まえて使用していくことが重要です。現時点での影響だけでなく、出生児の体重といった周産期データや予後の調査など、長期的に検討を継続していき、より良い培養液を使用・開発していくことが重要であるということがわかる内容でした。
培養部の水本室長は「PROSPECTIVE RANDOMIZED MULTICENTER STUDY ON CULTURE OF SIBLING HUMAN OOCYTES IN A SEQUENTIAL MEDIA SYSTEM WITH AND WITHOUT ANTIOXIDANTS:THE EFFECT OF FEMALE AGE」という内容でポスター発表を行いました。この発表は、ガードナー分類や培養液において世界的に有名なガードナー先生およびモンタック先生との共同研究であり、培養液に抗酸化剤を添加することで胚の質を良くし、胚盤胞に発育する率も上昇し、特に高齢の患者様において妊娠率や妊娠継続率を向上しうるという内容でした。名誉なことに、この発表はSRBT Basic Science Awardにも選ばれ、表彰をいただくにいたりました。
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授賞式の様子(水本)
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ガードナー先生と水本培養室長
学会の合間には少しだけ観光もさせていただきました。アメリカ合衆国の独立宣言と憲法宣言が署名された独立記念館や、映画「ロッキー」でシルベスター・スタローンが駆け上がるシーンで有名なフィラデルフィア美術館の階段にいきました。あいにくの雨だったのですが、日本にはない街並みや雰囲気を楽しむことができました。
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ロッキー像の前で
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独立記念館
国際学会への参加は去年のESHREに引き続き2度目だったのですが、発表という機会は初めてだったので、非常に良い経験を積むことができ、自分自身のスキルの向上に少しでもつながったのではないかと思います。最後になりましたが、このような経験をさせてくださった院長および、発表のサポートをしていただいた村上研究室主任、水本室長に感謝するとともに、参加するにあたり業務の調整に協力してくださったスタッフの方々には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。