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スタッフブログ

ESHRE2025に参加して 院長 蔵本武志

カテゴリー: ドクターブログ, 学会参加レポート 2025年7月8日

6月29日からパリで開催されましたESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)2025に参加してきました。
ESHREはかつてスイスのローザンヌで開催されたESHREで当院から2題演題を発表して以来、可能な限り参加していますが、
オーストリアのウィーンでのESHRE以降、コロナ禍となりしばらく参加していませんでしたので久しぶりの参加です。
今回はパリで開催されたこともあり、138ヵ国、12,582人の参加となりました。今年のパリはこれまでにない連日35℃の猛暑でした。
ESHREは世界最大の生殖医学会ですが、特に興味のあったものを紹介します。

最近、生成AIが非常に発達してすべての分野に入りつつあります。
生殖医療にもAIが導入されつつあり、今回も臨床も胚培養もAIを用いた発表が多く見られました。
卵巣刺激法もAIを用いて薬剤の投与を最小限に抑えながら、成熟卵子の採取数を最適化する発表がありました。
とくに今回はESHREガイドライン2025が発表され、卵巣刺激法も多少変更がありました。
卵巣の反応性を予測する指標として最も良いのは胞状卵胞数(AFC):月経初期の2-9mmの小卵胞数とAMH値であると明記されています。年齢、BMI、FSH値は推奨されないとされました。

卵巣刺激法はアンタゴニスト法がアゴニスト法より推奨される。さらに、全胚凍結を前提とする場合は、アンタゴニスト法と新しく推奨されたのがPPOS(合成プロゲスチン製剤投与)です。PPOSは、中国で比較的最近開発された方法ですが、これまでESHREでは有効性をあまり認めていませんでした。
PPOSは合成プロゲスチン製剤(ヒスロン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、デュファストン、プロベラ等)を使用する方法で、安価で効果があり、アンタゴニスト法と同等の臨床成績で、PGT-Aで両法での胚盤胞の染色体検査をしたところ、アンタゴニスト法とPPOS法で差が見られなかったことから、全胚凍結症例が前提ですが今年より推奨されています。

また、別の発表では、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を行い、染色体数が正常な胚を選んで胚盤胞移植すると妊娠率は高くなり、その臨床的妊娠率は約50%とされているが、それで妊娠しない原因として、胚と子宮内膜の相互作用や胚の遺伝子発現パターン、胚の代謝が重要であり、PGT-AでDNAを診るだけでなく、他の遺伝子検査でRNA発現も調べることが必要だという発表がありました。

ARTが保険適用となり、できないことも多くなりましたが、まだまだ妊娠率を改善できる可能性があることが確信できました。今後、有効と思うできるものを積極的に取り入れながら、皆様のご希望にできる限り添えるようスタッフ一同取り組んで行きたいと思います。


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