フィンランドでのデモンストレーションを終えて
カテゴリー: ラボラトリーブログ 2005年2月1日
2004年9月、フィンランド・ヘルシンキにある‘ファテリノバクリニック’のラボ主任、イルッカ氏から胚盤胞のVitrification(超急速凍結法)をフィンランドで指導して欲しいと依頼されました。
彼との出会いは2003年のスペインのマドリッドで開催された欧州生殖会議(ESHRE)で私が当院の『胚盤胞のVitrification(MVC)法』をポスター発表したところまでさかのぼります。
当院のVitrification法での成績
凍結融解後の生存率、97.3%、妊娠率、53.1%(発表時)が高いだけでなく、液体窒素中に凍結胚盤胞を保存する際、保存用ストローの両端を完全に密封する安全な方法に興味を持ったようでした。
ポスター発表中に質問してきた彼と日本に帰ってからも親睦を深めてきた私は、2年後の2005年2月にフィンランドで胚盤胞のVitrification のデモンストレーションすることになりました。
人口500万人のフィンランドでは‘糧は森とノキアにある’と言われるほど自然と産業が調和し、また福祉国家としても有名です。3度までは体外受精治療費が保険でカバーされているので、患者自身が治療内容や各施設の成績などの情報を調べてあげて病院を決めるそうです。
プライベートクリニックは費用が高いけれど、医師、コーディネーター(助産師)、ラボスタッフのサポートが充実しているので多くの患者が尋ねてくるとのことでした。
また生殖医療の技術も高く、数年前より多胎を防ぐために1個移植を実施していますが妊娠率は維持しているとのことでした。
私のプレゼンテーションはフィンランド第3の都市、タンペレ市で行われました。
10人程のワークショップと聞いていましたが、姉妹クリニックのドクター、ナース、ラボスタッフがフィンランド各地から全員集合しているだけでなく、遠くは隣国、ロシアのサンクトペテルブルグからもラボスタッフが参加され、会場には40人もの人が集まっていました。
その後、年間採卵を800件こなしているAVAクリニックでデモンストレーションを行いました。
事前に打ち合わせをしていたものの、慣れない施設でのデモは難しく、また失敗する不安がつきまといましたが、幸せなことにデモは大成功に終わりました。
すべてのラボスタッフから「GOOD!」『全く異なった環境での成功は素晴らしい』と賞賛を頂き、私は緊張しっぱなしの日々から解き放たれました。
主催されたアバクリニックのピロッコ先生とファテリノバクリニックのイルッカ氏の計らいで、多くの施設のラボスタッフと交流することが出来ました。
フィンランド人は結婚制度にこだわらない国民と言われています。法律や社会が日本と異なるので生殖医療も一概に比べられませんが、情報を交換することで、これからもより深い知識とより高い技術を得て行きたいと思っています。
培養室 杉岡美智代