パース(オーストラリア)で開催されたオーストラリア、ニュージーランド生殖医学会(FSANZ2024)に参加して(院長レポート)
カテゴリー: ドクターブログ, 学会参加レポート 2024年9月30日
2024年9月にオーストラリアのパースで開催されたオーストラリア生殖医学会(FSANZ 2024)に蔵本和孝医師と培養室室長の水本と参加をしてきました。
FSANZでは胚培養液の開発で世界トップのデビット・ガードナー先生やアメリカのジャック・コーエン先生が培養室の全自動化について話され、近い将来のラボの方向性について示されました。
オーストラリアは移民も多く、わが国と比べて年々、人口・物価が増加しています。物価は以前の3倍以上にもなったそうです。
私達が最初に訪れたパースは、人口205万人を有する美しい都市です。
パースは私が1990年にオーストラリアの医師免許を所得して、PIVET Medical CentreでDr. Yovichの教えの元、体外受精の研修と実地を行った場所でもあります。
現在、PIVETはMonash IVF Perthと名称を変えていますが、建物の外観はほとんど変わっておらず、当時の懐かしい記憶のままでした。
今回34年ぶりにこの場所を訪れましたが、体外受精の妊娠率を向上させるべく、日夜働いていた若かりし頃の私を思い出しました。
お世話になったJohn Yovich先生は既に退職されており、現在はヨーロッパにお住まいで、お会いすることは叶いませんでしたが、お父さんそっくりの息子さんがエンブリオロジストとして働いておられました。
1990年にPIVETで働いていたとき、体外受精に対し、高度なチーム医療で臨まれていることに感銘を受けた覚えがあり、その当時、医師と検査技師のみで体外受精を行っていた日本では考えられないような素晴らしいシステムを見て、目から鱗が落ちたものでした。
この時、オーストラリアの地で生殖医療に一生を掛けよう、そして優秀なスタッフ(医師、サイエンティスト、エンブリオロジスト、IVFコーディネーター)を導入してチーム医療を行い、よりレベルの高い生殖医療を日本で行おうと心に誓いました。
これが1995年に開院する蔵本ウイメンズクリニックの原点です。
1990年、当時の卵巣刺激法は最も良い方法として、GnRHアゴニストのロングプロトコール法が主流でした。培養液は主にHTFという卵管液に似た初期胚を培養するもので、まだ胚盤胞を培養することは出来ませんでした。
FSANZ後はオーストラリア大陸を横断して、オーストラリア最大の人口を有する都市であるメルボルンへ移動し、親しくさせて頂いているメルボルン大学の教授でメルボルンIVFのサイエンティフィックディレクターでもあるデビッド・ガードナー先生の施設を訪問しました。
ガードナー先生は人の胚盤胞まで培養する培養液を世界で初めて作成し、また胚盤胞の質の評価法であるガードナー分類を考案された方です。今回、メルボルンIVFの中をガードナー先生自ら案内していただき、先生が考えておられる新しい技術等について情報交換を行いました。また、ガードナー先生の最新の著書を先生自ら私に贈呈していただきました。
当院培養室とガードナー先生は以前より協力関係にありますが、当院は先生が考案された「活性酸素を除去した抗酸化剤添加培養液」を用いた培養を行った結果、高齢患者に対する有用性を初めて確認し、水本培養室室長が2019年にアメリカ生殖医学会(ASRM)で発表してSRBT Basic Science Awardに選ばれ、表彰をいただきました。さらに水本室長の論文は海外の学術雑誌で発表されました。
続いて、N゜1 FERTILITYへも訪問しました。N゜1 FERTILITY はMonash大学のIVF部門の副院長であるDr. Lynn Burmeisterが6年前に開院したクリニックで、最近この場所に移転されたそうです。
スタッフは全て女性で、施設内の内装はピンクで統一されたカラフルな印象でした。クリニックには最新の機器が備えられておりました。今回3つの施設を見学しましたが、オーストラリアでトップクラスの施設はいずれも効率の良い診療を行っているように感じました。
今回のオーストラリア訪問を通じて、またガードナー先生や他の方々と交流し、今後もよりレベルアップしたクリニックを目指したいと思っております。