バルセロナ(スペイン)で開催された生殖医学会に参加して
カテゴリー: ラボラトリーブログ, 学会参加レポート 2018年8月4日
スペインのバルセロナにて、7月1日から7月4日までヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)が開催されました。
当院からは院長および培養士1名の2名が参加しました。世界130カ国から11600名が参加し、日本からは120名が参加しておりました。
ESHRE開催1週間ほど前にスペインのバレンシアに入り、着床に関連している遺伝子検査を世界的に実施している「Igenomix」の本社およびスペインのみならず世界のさまざまな地域で生殖補助医療を行っているクリニックである「IVI」の見学をさせていただきました。
IgenomixはERA(子宮内膜受容能検査)、子宮内フローラ(生殖器内に存在する様々な菌のバランスを調べる検査)、PGD(着床前診断)、PGS(着床前遺伝子スクリーニング)、NIPT(新型出生前診断)などといった遺伝子検査を外部から受託し、その検査を行っている会社です。Carlos Simon教授とお会いし、意見交換を行いました。Simon先生は、反復着床不全では至適な子宮内膜移植時期にズレがあること、着床に関連している遺伝子365個を見つけ、最も着床しやすい時期を示すWOI(Window of Implantaion)を調べるERA(子宮内膜受容能検査)を確立された先生です。ERAをおこなう日に併せて子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎関連菌の同定検査ができ(この3検査をあわせてEndomeTRIOと言うそうです)、その結果をもって有効な抗生剤等の治療を行い、適切な胚移植日を決定します。
Igenomixの本社では年間4000件ほどの解析を行っているとのことでしたが、解析を行うチーム、分析および情報提供を行うチーム、研究を行うチームなどにきちんとわかれており、スムーズに情報を提供できるシステムが作られているとのことでした。
IVIは1990年に設立された生殖補助医療クリニックです。スペインのみならずアメリカ、イタリア、メキシコ、インドなど世界のさまざまな地域で生殖補助医療技術を提供しています。それらの地域のクリニック全体で年間13000周期の採卵、12000周期のETを行っており、患者様の希望によっては卵子提供やPGDやNIPTなどの遺伝子検査も行っているとのことでした。見学をさせていただいたバレンシアのIVIはIVI発祥の施設で、年間6000周期の採卵を行っていました。約250名のスタッフが働いており、9:00~14:00、14:00~21:00の2交代制でスタッフも非常に働きやすい環境となっていました。また、患者様の待ち時間を減らす対策にも取り組んでいるそうです。非常に刺激のある経験をすることができました。
見学後は学会参加のためバルセロナに移動しました。学会期間中は日本語セミナーもあったため、英語が苦手な私でも今回の学会の演題の内容を深く理解することができました。学会の内容は昨年に引き続きPGDやPGS、タイムラプス(受精から胚盤胞までの発育を等間隔で撮影し観察するもの)を用いた胚の解析などが多く見られました。
国際学会に参加することで、世界各国で行われている医療技術に触れることができ、医療従事者の1人として刺激を受けるとともに、また1歩成長する事が出来たような気がします。
学会の合間には観光もさせていただきました。サグラダ・ファミリアやカサ・ミラ、カサ・バトリョなどの世界遺産などを見学させていただきました。日本では見られないような街並みが非常に美しく、思わず写真を何枚も撮ってしまいました。スペイン料理であるパエリアや地中海料理などもいただきました。日本人の口に合う食事で非常に美味しくいただくことが出来ました。また今回はドバイを経由しての渡航だったのでドバイの観光も少しさせていただきました。この時期のドバイは非常に暑く、外に出るとサウナに入っているような感覚になり、実際現地の人たちもこの時期の昼間には仕事をセーブしたりするとのことでした。世界一高いビルなども観光させていただいたのですが、街並み自体が近未来的で非常に感動しました。
今回、国際学会に参加という貴重な体験をさせていただいたうえに、スペインおよびドバイ観光も十二分に楽しませていいただき、日本ではなかなか味わうことのできない現地の料理も美味しくいただくことができました。このような経験をさせて下さった院長に感謝するとともに、参加するにあたり業務の調整に協力して下さったスタッフの方々には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
培養室 長尾 洋三