治療の流れと期間
当クリニックでは、患者様に納得のいく説明の上で、最も適した治療を行います。系統だった治療を行い、焦らずに続けて行けば、8割以上の方が妊娠できるも のと確信しています。
当院は現在考えられている最高水準の医療を提供しています。前向きな気持ちでご一緒にがんばりましょう。
治療方針
まず不妊スクリーニング検査を行い、不妊原因を調べた上で、不妊原因と女性の年齢および卵巣予備能をもとに治療方針を立てます。
不妊症検査を受ける時期の目安は、以下のとおり日本生殖医学会が示しています。
治療のステップアップ
卵巣内の卵子数を予測する(卵巣の予備能力を見る)指標となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査を行い、AMHの値と不妊原因、年齢をもとに治療回数の目安を患者様 と相談して決めます。AMH値が1.0ng/ml以下の低値になると、卵巣予備能が低下して、卵子数がかなり減っていると予想します。さらにAMH値が0.1ng/ml以下になると閉経が早 くなる可能性が高いと判断し、高度生殖医療(ART)をお勧めしています。(AMH値は、卵子数が多いか少ないかを知る検査ですが、卵質は女性の年齢が最も関係し、AMH値では分かり ません)
具体的な治療回数の目安は、女性の年齢が34歳以下でAMHが3.0以上であれば、タイミングは3~5回(自己タイミングや通院)して人工授精(IUI)を4~5回。35~37歳で AMHが2.0以上であれば、タイミングは2~3回(自己タイミングや通院)して人工授精(IUI)2~3回。38~39歳でAMHが1.0以上であればタイミングは1~2回(自己タイミングや通院) して人工授精(IUI)1~2回程度。40~42歳では妊娠できる期間が短くなってきていますので,最も妊娠率の高いART(高度生殖医療)をお勧めしています。これらは患者様と相談し て決めていきます。
年々晩婚化が進み、治療に来られる方の年齢が高くなっています。30代後半や40歳以上になると卵子数が減少するとともに、卵子の質も低下し、また染色体異常の卵子も 増加するため、妊娠しにくくなるうえ、妊娠しても流産してしまう可能性が高くなります。妊娠、出産できる時期には限りがあります。妊娠しやすい時期に、より妊娠率の高い治療 に早目にステップアップすることをお勧めしています。
年齢別 ART1回の胚移植あたりの成績からみた 望ましい不妊治療の進め方
妊娠率の違い(人工授精と高度生殖医療との比較)
ART(体外受精や顕微授精)の場合、妊娠率は人工授精に比べ約4~5倍高くなります。
不妊スクリーニング検査
各検査の説明についてはこちら 月経周期に合わせて行います。
1. 月経初期の検査:卵胞発育に大切なホルモンの基礎値を調べます。
(月経開始1日目~5日目)
- ホルモン採血:LH,FSH,PRL
- 超音波検査
2. 月経終了後~排卵前まで:卵管の通りを調べます。
(月経開始7日目~11日目頃)
- 子宮卵管造影検査
- 通水検査
3. 排卵の頃:排卵がいつ頃起こりそうか調べます。
(月経開始11日目~14日目頃)
- 尿中LH検査
- 超音波検査
- 頸管粘液検査
※排卵日が推定されたらヒューナーテスト(夫婦間の相性をみる検査)を行います。
4. 排卵が終わってから:排卵が終わり、着床に必要なホルモンが出ているか調べます。
(排卵後5日目~8日目)
- 超音波検査
- ホルモン採血:黄体ホルモン
※精液検査は、上記の検査が終わるまでに早めに行います。自宅で採取した検体を2~3時間以内にご持参頂ければ、 ご主人は来院されなくでも検査は可能です。
一般不妊治療(人工授精)
1. 月経初期:この周期に卵胞の大きさ(大きすぎるものなどがないか)、卵巣が腫れていないかを調べます。
(月経開始1日目~7日目)
- 超音波検査
※必要な場合に排卵誘発剤(薬や注射が処方されます)
※注射の場合は、排卵日の検査までに何回か注射を打つために通院が必要になる可能性もあります。
2. 排卵の頃:排卵がいつ頃起こりそうか調べます。
(月経開始10日目~12日目頃)
- 尿中LH検査
- 超音波検査
※通院が難しい場合は、クリアプラン(自宅で行える尿中LH検査)で排卵日を推定することができます。 医師に御相談下さい。
3. 排卵日が推定されたら人工授精を行います。
※排卵日は1~3日前頃に推定できます。
4. 排卵が終わってから
必要に応じて、着床に必要な黄体ホルモン剤が処方されます。自宅で内服します。
ART(体外受精や顕微授精などの高度生殖医療)
1. 月経初期:この周期にどのくらいの卵胞が育ちそうか、卵巣は腫れていないかを調べます。
(月経開始1日目~3日目)
- 超音波検査
- ホルモン採血:LH,FSH,E2,P4 (4種類のホルモンが正常なら治療が開始されます)
- 排卵誘発剤(主に注射)が処方されます。
※注射は、自宅で自分でうつこともできます。自分でうたれる方は、この日に練習して 5~6日分の注射を持ち帰って頂きます。
2. 注射開始後6~7日目から採卵日が決まるまで:採卵日がいつになるか卵胞の状態を調べます。
(月経開始7日目頃~)
- ホルモン採血(LH、E2、P4)
- 超音波検査
※採卵日が決まるまで数回(2~3回、連日の場合もあります)の通院が必要となります。
※採卵日は、ホルモンや卵胞の状態により、2日前に決まります。
3. 採卵日:卵子を取り出す手術の日
(月経開始11~16日目頃)
※朝8:10迄に来院して頂きます。入院は必要ありませんので採卵後、午後には帰宅することができます。 帰宅後は、自宅で安静にしてお過ごしください。お仕事もお休みをしてください。
※御主人の精子の提出もこの日の朝に必要となります(採卵日までの禁欲期間は、できるだけ、2~3日以内でお願いします)
4. 採卵後
※新鮮胚移植の場合は採卵後3~5日目に胚移植を行います。
※凍結融解胚移植の場合は、約1カ月半後に胚移植となります。
5. 新鮮胚移植の場合
(採卵後3~5日目)
医師の指示日に受診し、子宮の中に胚を移植します。 胚移植後約2週間目に尿による妊娠判定検査を行います。
6. 凍結融解胚移植の場合
※採卵後7~14日程度で次の月経が開始します。
(採卵後1回目の月経開始2-5日目)
- 超音波検査
- ホルモン補充を行って凍結融解胚移植を行うための準備のためのホルモン剤を処方。
※ホルモン剤は14~21日間、自宅で内服します。
(採卵後2回目の月経開始1-3日目)
- 超音波検査
- 子宮内膜を厚くするホルモン剤(主に貼付剤)を処方します。
※ホルモン剤は自宅で貼付します。
ホルモン剤貼付後13日目頃:子宮の内膜の厚みをチェックします。
- ホルモン検査(E2、P4)
- 超音波検査
※子宮内膜の厚さが7mm以上に厚くなっていたら黄体ホルモン剤の補充を開始します。
黄体ホルモン剤開始後3~6日後
- 凍結融解胚移植
胚移植後約2週間目に尿による妊娠判定検査を行います。