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スタッフブログ

卵巣凍結の現場を見学して

カテゴリー: ラボラトリーブログ 2020年2月7日

 12月7日から12日まで、「卵巣凍結技術」の研修のためドイツのデュッセルドルフ大学病院に蔵本院長、水本培養室長と私の3人で見学に伺いました。日本においては発展途上の技術ですが、ドイツにおいては盛んに行われております。

 がんや血液疾患に伴う化学療法や放射線療法は、卵巣機能に影響を及ぼす恐れがあります。卵巣凍結は、そのような病気になってしまった患者様の妊孕性を維持するのに適した技術の一つです。化学療法などの治療を行う前にあらかじめ卵巣組織を採って凍結しておき、治療後妊娠の許可が出れば、凍結していた卵巣組織を体内に戻し卵巣機能が回復してくるのを待ちます(図1)。場合によっては治療前と同等の卵巣機能を回復し、自然妊娠に至ることも可能になります。 

メリット :卵巣機能の回復が見込める、卵子凍結に比べて多くの卵子を保存し得る、卵巣刺激の必要がない、小児患者でも可能
デメリット:腹腔鏡または開腹手術が必要で侵襲性がある、卵巣にがんが混入していた場合再発の可能性がある

【卵巣凍結技術】

図1.卵巣凍結技術の流れ

図1.卵巣凍結技術の流れ

➀がんなどの化学療法や放射線治療法等の前に、腹腔鏡または開腹手術により卵巣またはその一部を摘出します。
➁摘出した卵巣組織を細かい切片に切りとります。
➂卵巣組織に凍結のダメージから保護する凍結液を浸透させます。
➃プログラムフリーザーという機械を用いてゆっくりと凍結していきます(緩慢凍結法)。
➄液体窒素中で保存。半永久的に保存する事が可能です。

摘出された卵巣組織

摘出された卵巣組織

卵巣組織の細切

卵巣組織の細切

プログラムフリーザー

プログラムフリーザー

➅がんなどの治療が終了した後、担当医の許可を得た後に保存していた卵巣組織を融解。
➆融解した組織を腹腔鏡を用いて体内に戻します。うまく生着することができれば、治療前と同等の卵巣機能を取り戻す可能性もあります。

 ドイツでの卵巣凍結は、Erlangenで1992年に、地域的な医療としてスタートしました。その後2003年にBonnで1施設目のCryoBankが設立し、あらゆる地域からの検体を受け入れる体制が整えられました。そして2017年に今回見学させて頂いたDusseldorfに2施設目CryoBankが設立し、その規模を拡大していきました。
デュッセルドルフ大学病院は前述のCryoBankを併設しており、ドイツのあらゆる地域から検体を受け入れており、技術の提供を行っています。昨年度で148件、今年度の11月時点で200件ほど卵巣凍結を実施しているということでした。また、FertiPRPTEKTという組織に所属し、相互にネットワークを繋げることで日々技術の更新を行っています。

デュッセルドルフ大学病院

 FertiPROTEKTは2006年に設立され、ドイツ・スイス・オーストリアの3カ国で連携され、卵巣凍結などといった妊孕性を温存する技術の提供を行っています。卵巣凍結は2017年度で341件、2018年12月までで合計4049件実施しているということでした。またFertiPROTEKTのデータによると、卵巣凍結の平均年齢は29.9歳、保存期間は4.4年、移植年齢は34.3歳ということでした。
 卵巣凍結はまだ発展途上の技術ではあります。しかし、妊孕性の温存という点においては非常に価値のある技術であり、今後大きく広まっていくことが期待されます。日本においてもこの技術を導入し、実施している施設もいくつか存在します。当院ではがん患者の方々の妊孕性温存目的のため、すでに卵子や精子、胚凍結を行っておりますが、今後体制が整えば卵巣凍結を導入していく予定です。

ご指導くださったMontag先生、Jana先生と

 最後になりましたが、今回は卵巣凍結技術の見学という貴重な経験をさせて下さった蔵本院長に感謝するとともに、その期間業務の調整をして下さったスタッフの方々に感謝申し上げます。また今回見学するにあたり、ご指導して下さったMontag先生およびJana先生には深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

培養士 長尾 洋三

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